見出し画像

理想的な結婚生活

 結婚した相手はインドア派だった。アニメ・ゲームオタクと呼んでも差し支えないだろう。彼の部屋には数多のフィギュアが飾られている。アクションゲーム等のキャラクターが矢じりや剣の矛先を作業場=ゲーム用大き目かつ解像度高いディスプレー付きPCに向けていて、彼は常に背後からそいつらに狙われているようだ。

 結婚する前はアウトドア派だった。小学校の野外活動とかキャンプ好きが高じて、高校時代はワンゲル、仕事でも文系理系問わずフィールドワークがあるようなものが好きだった。

 子供を産んで、アウトドアどころではなくなった。家族で楽しむのは、家の中で楽しめるインドアの趣味ばかりになった。映画を観たり、アニメを観たり。子供は夫につられてゲームをしている。

 長女が小さいときに一度、家族3人でアウトドアのイベントに参加したのだけれど、夫は不慣れで不機嫌になってしまい、なぜか帰りの車で大ゲンカ。それ以来、家族全員でのアウトドアはあきらめていた。

 二人の娘のうち下の子も6歳になり子育てが落ち着いてきて、ようやく私にも余裕が出たかな、夫が一緒でなくとも、私と子供で、とアウトドアに連れ出そうと試みている。でも、なんだかうまくいかない。

 週末、イベントに参加しようとするとなんだか体調が悪くなったり、そもそも初夏に連れ出したときに「蚊が多い」とかマイナス要素が効いていたらしく、「一緒に行こう」と誘っても「イヤだ」と返される。母寂しい。

 こうなると知っていたら、物心つかない頃から連れ出せればよかったのに。でも、当時はもっと余裕がなかった。仕方ない、精いっぱいできることをがんばってた。いいんだよ、わたし。

 子供が小さいときの外出は、カップルの協力がないと結構大変だ。二人の趣味が違うことは、異なる生まれ育ちなのだから当然だ。そこでお互い歩み寄って世界を広げられるか。これがキーなんだろうな。子供がいてもいなくとも。理想的な結婚生活。

 そういうことを、なんだか遠くに想っている。


投げ銭は、翻訳の糧になります。