発熱・2024
セルロース、ベルクロ
螺旋構造に絡みつく赤いモジャモジャとした糸屑のような繊維たち。中空の縦糸に、絡み合う横糸
たいていは、自然物が教えてくれる
それらをよく観察すれば良い
しっとりと、ひんやりと
秋の露は僕の睡眠時間を長くする
熱に熱っていた体躯は
セルロースを模した敷物に、沈む
人生の夏に、来年への落とし物を
大事に、だいじに
ひとりで種はまけないわけだけれど
苗の世話や毎日の水遣りは、
一人で淡々と行った方がいい場合もある
きっと隣人のアナスタシアの市街菜園が
交配種を運び
手 自然相手の訥々とした苦楽も
分かち合ってくれるだろう
そこに土地の境界線は関係なく
こさもちろん国境もなく、
海すらも流動的な目地材のように私達を繋ぐだけだ。
家族と名を付けて囲って
生まれ育った文化の常識を盾に役割に立て籠もって、それを人にも期待するから、おかしいことになる。
価値観など一度崩して、それからフラットに均せる位がちょうどいい。
持って生まれ育った時に自然と身につけたものが正しい、は既得権益に胡座、かいてる場合がある。
そんなものは砂の城にすぎない。
ある時が来たなら、形を失い
海を永遠と彷徨うマイクロプラスチックになる。
ほんなものを愛でて何が楽しかろう?
そんなものに換金した時間をかけて、何が愉しかろう?
鉱物の組成をみれば
時間をどんな条件下で過ごすかが
金を金たらしめ
アクアマリンをアクアマリンたらしめる
結晶の性格や運命を決定づけることは
自明の理であろう。
この熱は、私という物質の集合体を
どのように変容し運ぶのだろうか?
旅先でたびたび、発熱していた20歳からの3年間。それらは全て山に関係していた。
それから倍近くの歳月を経て、何か精神的なものの山を一つ越えて、野営して眠った後、下山の支度をしている未明ーーそんなところにいるのかも知れない。
MOR 17SEP2024