寳(たから)


夕暮れ

境目の時間

過ぎし日が意識を呼ぶ


夏の日

さざなみの音

細胞の中から聞こえる音


ずっと待っていたようで
躊躇していたようで


朧に翳む
輪郭が幾重にもなって

掴めない


記憶の中を探す

探す

探し続けるけれど


そこに立っている人は

ずっと会いたかった人は

誰なのだろう


桜の香りがする

ちがう

桃の香りなのかもしれない

蒼さが混ざっていたから


ちがう

百日紅の花の色なのかも

桜の絨毯のような


重なり

混ざって

記憶をかき回す


自分でかけた鍵を

解くことができない

わたしは


春に

夏に

秋に

冬に



あなたが呼ぶ声を

待っている



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