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息子の涙…【無料記事】

シゲに話した様に、これ以上の悲しみは本当に無理である。

何とか悩まぬ様に、悲しまない様に気持ちを持っていかなければ、
仕方がないじゃん!
そんな風に思い込むしか無かった。
いわゆる開き直り。
泣こうがわめこうが進級出来ないのであれば仕方がないじゃん!
以前の個人面談で何故か先生から
「進級出来なかった時は留年とかでは無くて自主退学を…」
と言われていた。
本人にその気が無い以上これ以上通わせる気は無かったが先生のその言葉は今だに謎である。
別にシゲは学校に行くのが嫌な訳では無い…
どちらにせよ一晩で息子の高校中退の覚悟を決めるなんて…
余りにも難しい課題であった。
そして翌日…
進級出来ない事が確定した。
覚悟を決めるどころか、こんな状況においてもまだ
もしかしたら
奇跡的に進級出来るのでは…
などと考えていた。
やっぱり一晩では覚悟なんて出来なかった。
それでも覚悟を決めた様に見せかける。
シゲにも…
佐々木さんにも…
祖母や継母や妹にも…
そして友達にも…
又も自分の本心とは裏腹な態度や言動…
そんな事の繰り返しで精神が壊れてしまうとも知らずに私は又、強がって現実を受け入れたフリをしてしまった…

今後の話をする為に最後の面談がある。
その前にシゲとキッチリ話をしなければならない。
シゲは多分進級出来ると思っていたのだろう…
見るからに落ち込んでいた。
「俺は切羽詰まらないと動けないんだよ」
と以前言っていたがそれでも毎回何とかなっていたのだ。
切羽詰まってから動き出して何ともならなかったのは今回が初めてである。
切羽詰まってからでは遅いんだって事を学ぶ為には何と大きな代償だろうか。
別に学歴うんぬんの為に卒業しろと言って来たわけでは無い。
シゲが自分で入りたいと言って入った高校だからなだけである。
自分で決めた道を最後までやり遂げて欲しかった。
嫌になったから辞める…じゃあ世の中渡って行けない。
シゲに言った…
「お前が女の子だったらいい…旦那に幸せにしてもらえばいいんだ…でもお前は男で、将来女房と子供を幸せにして行かなきゃいけないんだよ。それなのに3年間の高校生活すらやり遂げられないなんて今回の事で学習しなければ2年間通った事も無駄になるよ。社会に出たら学校より何倍もツライからね」
と…
そして
「お母さんが学校を辞めてお前を生んだのと、今回お前が学校を辞めるのとは意味が違うんだよ。お母さんはお前の事を生むって自分で決めたの…だから何があっても自分で育てようって決めた。だから生んだ後も、苦労しながら育ててきた事も何も後悔した事なんか無いよ。だから…そんなお前に、中途半端な人間になって欲しく無いんだよ」
シゲは黙ってボロボロと涙を流して聞いていた。
いつまでも…
いつまでも…
涙は止まる事無くうなだれていた…

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