ついふらふらと蕎麦屋にひっかかる上げ潮の塵芥の記
道灌山下から酔い覚ましがてら日暮里まで歩く。
サンゴタールで翌朝のパンを買い、まだ開いていた川むらに吸い込まれる。
手っ取り早く出て来そうな月見芋と玉子焼き。
酒は色々あったが金婚を。
飲み方を訊かれたので「常温で」。
ちゃんとぬるいのが出て来た。 話せる。
月見芋。
ぐっちゃぐちゃに混ぜて醤油を一とっ垂らし。
更にぐっちゃぐちゃに。
他者と分かち合うものではない、独り飲みの為の肴。
芋が濃いので、端でちぎるように口に運び、味わい、酒で流す。
空いていたので思ったより早く来た卵焼き。
蕎麦屋の卵焼きだが、下町と言えど趣味蕎麦の店なので品良く。
あまり甘くないのが良い。
酒と肴が無くなりそうな頃合いで、〆に冷やしたぬき。
「そばですか?」そばです。
皿盛りのそばにたぬき。
刻んだ胡瓜とナルト、卵焼き一と切れ、煮たしいたけ。
見た目は小諸そばの奴の上位互換くらいの感じだが、口に入れるとマァ格の違いを思い知らされる。
ウマい。
会計を頼むとおばあさんが出て来た。
混じっていた新札をしげしげと眺める。
「いやぁ、まだ慣れません」「おもちゃみたいよね」
一寸したところに出る、商いをする家の東京ことばと仕草。
外食をする際、こういうやりとりにお金を払っているところも多分にある。
(2024.08.14 記)