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『アパートメント眞世界』/壱號室「新宿」

鶴巻町から江戸川橋、江戸川橋から富久町。
バスを乗り継いで四ツ谷ギャラリー・ニエプスへ。

寫眞館GELATIN主催企画のグループ展を観覧というか滞在と言うか、堪能して来た。

寫眞館GELATIN
https://gelatingelatin.wixsite.com/shashinkangelatin
https://twitter.com/gelatin1992
https://www.instagram.com/shashinkan_gelatin/?hl=ja

卯月梨沙
https://twitter.com/uzrs_04ym
https://www.instagram.com/uzrs_04ym/

福川孝
https://www.etsy.com/jp/shop/TokyoTriptychPhoto
https://twitter.com/fukukawa75
https://www.instagram.com/fukukawatakashi/

山田谷直行
https://www.chokko.rocks/
https://twitter.com/chokko_yamadaya
https://note.com/chokkoyamadaya

天井から暖簾と言うかタペストリーと言うか、布を垂らして4区画に分け、其処にそれぞれの「部屋」を創り出す趣向。

和紙+サイアノプリント+蜜蝋に、新機軸でトタン+乳剤と言う新技法を試みた山田谷。
最初にやってみたものは乳剤が剥離してしまったそうなのだけれど、その剥離した乳剤。
掌に載せると微かに見える「写っているなにか」を宿して、湯気に踊る削り節よろしく、ゆらゆらと蠢く。

複製芸術と見られがちな写真と言うものを、如何にして「一点モノ」にするかに執念を燃やす卯月梨沙。
ブリントの下地に塗られた塗料の煌めきが、当たる光の強さや角度で変わる。
部屋に迎え入れれば、飾る場所により、季節により、時間により、その表情を変えるだろう。

パノラマカメラで撮った長大な長方形ネガを組み合わせて、更なるパノラマを創り出す福川孝。
作品のみならずフィルムカメラも販売していたが、品揃えが渋い。
二眼レフはリコー、トプコン、コーワ、シロ。
ウエスターシックス、フジペット、ミノルタA etc...
シロフレックスのウォーレンサックに心惹かれつつ、手元不如意で断念。

その一角だけ照明が落とされた「だけ」ではない暗さの寫眞館GELATIN。
床から闇が染み出すように、意図して暗くしたその意図を超えて暗い。
いつもは囁くような存在のざわめきも、撮影テーマが「新宿」と言う事もあり、、都会の喧騒のように饒舌。

4部屋それぞれの作品を拝見し、話を聞き、作品を見直す。
最早跡形もなく消え去ってしまったが、10年ほど前まで暗室として借りていた阿佐ヶ谷の戦前築のアパート(空襲の火災が数百メートル手前で止まったらしい)の雰囲気を、久しぶりに思い出した。

数量的エディション管理ではなく、一点モノにしかなり得ない技法の探求であったり、新宿と言う街を自分の作品の中にどう取り込んでいくかについての試行錯誤であったり、熱量と濃度の高さに脳が酩酊するような、不思議な、しかし心地良い疲れ。

写真で出来る事、写真に出来る事はまだまだある。

(2022.12.24 記)


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