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石田桃香×上野勇写真展 「愛しい瞬間(とき)」

年に何回か、指折り数えて待つ写真展がある。
そんな写真展の一つが初日を迎え、口開けの時間に合わせて渋谷ギャラリー・ルデコへ。

初日の開場は16:00からとの事だったが、設営が終わっておらず、時間を潰して出直し。

手指消毒液の噴霧と検温を同時に行える機会が設置されており、問診票に計られた体温や体調など必要事項を記入し、提出して入場。

エントランスからの外光を遮る形でパーティションが一枚。
ここに最初のグラビア撮影での4カットを1枚に纏めたものと、直近の撮影分と、B0で二枚。
2019年4月、キャリアの振り出しの頃の初々しい写真から、2021年7月、直近の自然表情まで見せることを仄めかす。

中に入ると、引いて見ることの出来る壁にB0の大伸ばしが直貼りで5点。
白の台紙、白の額で統一されて31点、西からの外光を遮る形で置かれたパーティションにアクリルの小品を12点。

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西側の窓の前にもパーティションが置かれ、天井に近い窓にはトレーシングペーパー。
外光が直接入らないようにしてある。
天候や時間帯によって「見え方」が変わらない為の工夫。

展示作品は#01から#50までの番号と、撮影年月が添えられている。
作品の大小で配置のバランスがとられていて多少の入れ替わりはあるものの、番号が若いものからほぼ時系列で並べられている。

過去撮影分は雑誌掲載用のグラビアで撮られたもので、水着中心。
カメラの前に立つ仕事をそれまでにも長く続けてきていても、水着や露出度の高い衣装でそれをやるのは矢張り勝手が違うようで、グラビア初期は目を見開いてカメラと正対している。
そのこわばりが、撮影を重ねる毎に、徐々に取れてくる。
見られる・撮られることで垢抜けて行く。
そして、グラビア以前の、カメラの前で振る舞った経験が生きてくる。

肌を写した部分が多い写真なので、さらりとレタッチ。
自分で撮った写真ではやらないのだけれど、レタッチが悪だとは思わない。
レタッチしたところが遊離せず、全体に馴染んでいる。
これも尊敬すべき職人の技術の一つ。

何点かに添えられた、石田桃香直筆の作品解説から、上野勇への信頼が伺える。
見せたい自分、見られたい自分に近い写真でもあるのだと思う。
綺麗に撮って貰えて、裏切らないし騙し討ちにもしない。
それは見る側からも分かる。

一と通り見終えて、全体像が把握できてくると、2021年7月、直近の撮影分8点が、現時点での石田桃香の到達点を示すものであることが分かって来る。
ベッドに寝転ぶ、靴下を干す、LPレコードをジャケットから取り出す etc..
カメラを直視せず、意識はそちらに向ける。
雑誌に乗せる前提の水着中心のグラビアとは一寸毛色の異なるこの8点、どれも良いのだけれど、私が心惹かれたのは暗いベッドの上、ランタンの明かりで顔を照らし出したカット。

見る前には数あるグラビアアイドルの一人であった石田桃香が、見終えるころには特別な存在として感じられてくる。。
指折り数えて待った甲斐のある写真展だった。

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(2021.10.02 記

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