ののかのカメラお写ん歩
石川野乃花(きゃわふるTORNADO)の写真散歩企画。
10名限定の狭き門だったが、当たってしまった。
今月はほぼ破産である。
敷居は高めの設定ながら、時間も長く内容も濃密で費用対効果としては高い。
(可処分所得が無くなるのは、単に私の稼ぎが悪い所為である。)
集合場所となる公園は、或る程度の広さがあり、歴史的建造物が近くにあり、江戸時代の大名屋敷由来の庭園があり、桜も咲き始めており、どの駅からも均等に遠く、こうした催しをする必要条件を満たしている。
「どの駅からも均等に遠い」と言うのは割と重要な要素で、便利すぎると人口密度が高くなり過ぎてしまう。
尤も、繁華街を避ける大衆心理と花見時が重なってしまい、なかなかどうしてな人出ではあったので、次回開催にあたってはもう少し詰めた方が良いかもしれない。
スタッフがチケット画面の確認と検温を行い、準備万端整ったところで石川野乃花が現れる。
動きやすく、動いて乱れず、それでいて絵になる出で立ち。
この辺りの匙加減、相変わらず巧い。
「仲良くして欲しい」とのことで、参加者が自己紹介。
私を含めた撮影歴の長い者に、初心者にアドバイスする係の大命が下る。
きゃわふるTORNADOの現場は、全員が全員仲良しと言う訳ではないが深刻な断絶も無く、比較的平和な現場だと思う。
当日の参加者も穏健な人々で終始和やかに。
2020年8月のワンマンライブで流された短編ドラマのロケ地でもあり、撮影場所を巡ったりしつつ撮影。
その間、スタッフの用意した写ルンですで石川野乃花を2コマ撮って良いことになっており、それぞれの参加者が趣向を凝らして撮影。
私は公園の由来を記した石碑の前でスカイツリーを借景にして日中シンクロで撮ってみた。
まぁまぁ意図通りにはなったが、痛恨の串刺し構図。
公園での撮影を終えるタイミングで、呼んであったタクシーに飛び乗ってスタッフの一人がラボ屋へ。
午後のトークショーの部に間に合わせようと言う荒業。
その後は街歩きをしながら撮影。
トークショーの会場となるワロップ放送局の近くで一旦解散。
それぞれが、それぞれに昼食。 (※飲酒は禁止)
私はいつものとんかつ屋で定食をいただき、時間まで周辺を散策。
路地裏に新しいパン屋が出来ていた。
クロワッサンを買ってみたが、外はサクサク、中はモチモチ。
バター香るなかなか良く出来たもの。
オマケで貰ったラスクがまた、塩キャラメルをたっぷり吸わせてあり、実にウマい。
こうした出会いがあるのも、写真散歩の楽しみの一つ。
トークショーの部も、一応チケット画面を確認。
アンケート用紙が配られたが、設問の量が多く、また考えさせもするもので、受付開始時間から開演までに埋められない参加者続出で開演が遅れる珍事。
その分、内容の濃い物にはなった。
写真展開催の時、リプリントしようとネガを見せたら「現像が悪い」と言われた話(それからネガを作るところからが写真だと考えなおしたとのこと。)
作品撮りのように、練り上げたイメージを形にするのではなく、奇跡を待って撮る話。
(ブレッソンの「決定的瞬間」である。)
個人的に面白かったのは、「絞りf4で撮るのが好き」と言う話。
前ボケが好きなのだけれど、ピントの合う範囲とボケ方がf4で丁度良くなる。
50mm/f1.4でf1.4からf16まで試してみて「f4か5.6」に辿り着いたと言う、経験則に基づく拘り。
カメラ初心者にも「いろいろ試してみた方が良い」とアドバイス。
教わった通りでもなく、本に書いてあった通りでもなく、自分でやってみて腑に落ちた事のみが、知識として蓄積されて行く。
アンケートの項目で「今後使ってみたいカメラ」と言うのがあったが、石川野乃花が使ってみたいのはハッセルブラッド。
「どうなんですか?」と訊かれたので、知っている限りのことは答えたが、私は所有したことが無いので「動く・動かない」の部分をざっくりと。
「レンズ」「本体」「フィルムバッグ」の三つの部分に分かれる構造なのだけれど、そのすべての相性が良くないと、ちゃんと動かない。
他の訳知りは「中古で買っちゃダメ」と話していたが、そう言うことになる。
中途半端な値段のライカでも写真は撮れるが、中途半端な値段のハッセルは写真が撮れない事すらある。
ただまぁ、ちゃんと動く個体で撮ったネガは得も言われぬもので、一度頼まれ仕事でプリントしたことがあったが、情報量が濃い。
中間の諧調の情報が多いので、印画紙次第で飛ばすも潰すも自在。
答えの選択肢が多すぎて、どうして良いか分からなくなる程だった。
・・・と言う点に於いては、石川向きではないかも知れない。
石川(とスタッフ)が撮った写真をズラリ展示して、参加者で見る趣向。
勿論購入することも出来る。
学校行事のあとの、余韻を楽しむような懐かしさがあった。
私は前述の通り可処分所得の枯渇により、特典会の始まるところで離脱。
石川のホスピタリティが上手く働き、参加者も石川本人も終始楽しそうだったので、成功であったと、私は思う。
しかし、歌って踊らない石川を撮ったのは何年振りだろうか。
参加者から撮られる対象たる石川もカメラを持っており、参加者も石川によって撮られる対象であると言うのが通常の撮影会企画との大きな違いで、そこも含めて新鮮で驚きのある催しだった。
(どういう事かと言うと、ご覧の通り石川の顔が写っていないカットが多い)
二回目にも期待したい。
(2021.03.20 記)