LOVECALL展
秋晴れの午后、自転車転がして長躯神宮前、AtelierY -原宿- へ。
汗をかきすぎる事も無く、5分も休めばかいた汗もすっと引く。
良い季節になって来た。
手指消毒と検温ののち記帳、木戸500円也を払って中へ。
受け取ったステッカーに日付が入っており、その日に限って出入り自由になっている。
六組のカメラマンとモデルが、写真で紡ぐ「愛」の形。
ステートメント
目の前に立つひとと向き合い
言葉以外で愛を伝える方法として
わたしたちは写真を選びました。
写真家から被写体へ。
被写体から写真家へ。
想い、伝え、表現することで
誰もが持つことの出来る
無形である愛を
LOVE CALL展として展観いたします。
本展示ではこの想いに共鳴し、
自身の愛と向き合った
6名の写真家が描く「LOVE CALL」を
皆様に受け取って頂けましたら幸いです。
ステートメントに続く壁面から、順に見て行く。
日暮圭介×向理来、高嶺しほり
性別としては男性と言う事になるであろう二人の異性装。
骨格からそれと分かるが、どちらともとれるし、どちらでもないようでもある。
肌補正強めだが、それはそれとして美しくはある。
湯澤祐紀×JILL
心持ち斜めから、素直に撮った2点。
ふわりと柔らかな表情。
滲み出て来た感情を、そっと掬い取ったような写真。
広角で寄って斜めからなので、若干デフォルメされているが、被写体との相互信頼があるので了解の下で作品になっている。
撮影会などで撮ることの出来る機会はあるものの、この表情は撮れる気がしないし、恐らく撮れない。
「まぁ湯澤祐紀なら撮れるだろうから、出たら買おう。」
的な、謎の諦め。
$Ö×やなぎばころん
名は体を表すと言うが、顔も頭蓋骨も目も、さまざまなものが悉く丸く「ころん」としたやなぎばころん。
積み上げられた衣装の山に埋もれたり、頂に座ったり。
きょとんとした、喜怒哀楽に分類しにくい表情が良い。
i-dee×中北成美
B0横位置とB1縦位置で2点。
バストトップが写っている部分に、ちょちょいとハートマークを描き込んで補整する遊び心。
美麗だが、高細密ではない、程の良い粒感のあるプリント。
写真が視野一杯に収まるあたりから先、更に寄ると画像を構成していたものが解けて粒に還って行く。
溶解ではなく分解。 寄ったり離れたりして、視覚の変化を楽しむ。
この写真の前で、比喩ではなく「立ち尽くして」いる人が居た。
ただならぬものは感じるが、その正体が見極めにくい。
sencha×ありかみう
人形になりたい人を、生きたまま意思のある人形に。
妖しい輝きを放つ、カラーコンタクト然としたカラーコンタクトの、この世のものならざる感じ。
私はカラーコンタクトが好きではないのだけれど、この場合は瞳の表情を消すことが、作品意図に適っている。
福島裕二×いのうえのぞみ
窓に当たって流れ落ちる雨滴を背景にして撮ったのかと思いきや、雨滴が被写体の手前にある。
よく見るとブラウスも濡れている。
どうなっているのか、理解に時間が掛かったが、雨に打たれるいのうえを、屋内から窓越しに撮ったものであった。
裏側に6点。 こちらで絵解きもなされている。
B0の作品を作るにあたっての、プリントの追い込み方がそれぞれで異なる。
i-deeや湯澤祐紀の作品は細密描写に拘らず、視野一杯になるくらいが見るにあたっての適正距離で、それ以上に寄ると粒感が出て来る。
この「適正な距離を探って寄ったり離れたり」も楽しい。
福島裕二の今回の作品はまつ毛の一本まで解像した細密描写。
視野一杯になったところから更に寄ると、必然的にトリミングされて別の絵として見えて来る。
写真の奥へ奥へ、分け入る感じ。
それぞれに、面白い。
公式の図録の他に、それぞれに趣向を凝らした販売物が用意されている。
更には階上で流されているBGMのプレイリストも公開。
脳味噌が飽和して弛緩するくらいにはじっくり見たが、恐らく見尽くせてはいないし、味わい切れてもいない。
会期中に、もう二度三度。
(2022.10.08 記)
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