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石川野乃花の喫茶オールドクロップ(2023/4/28)

月末の押上に一夜だけ出現するコンセプトカフェ的なものへ。

今月のメニューはこんな感じ。

料理とお菓子については石川が仕込んでおり、コーヒーも自家焙煎。

餡はこしあん派、野菜スープも小学校の給食でエサのようなものを出されて以来、自ら頼む事は先ず無いもの。
どちらも日頃の主義主張/思想信条とは対極にあるものだが

「石川が作るなら、まぁ間違いないだろう」

と言う事で、敢えて注文。
転向こそ人生。 主義主張は翻すためにある。

お手伝いウェイトレスは、notallから夏井るな

上から読んでも夏井るな

と新田清乃。

アイドル界のバスター・キートン

接客アルバイト経験からソツの無い夏井と、ソツだらけで危なっかしいが、何故か決定的な失態は犯さない新田の対比が面白い。

焼酎の注ぎ方からして対照的。
お客さんと会話しながらでもサッと静かに適量を注ぐ夏井。
会話を止めておちょこを親の仇のように凝視し、持ちにくい角度で瓶を小刻みに震わせながらなみなみと注き、注ぎ終えて微笑む新田。

新田の振舞い。
傍から見ていると左右に大きく傾き続ける綱渡りなのだけれど、当人にその自覚は無く、平地を歩くようにニコニコと楽し気に。
愛される奇人。

夏井はやることなす事ソツが無く、そのゆとりで客との会話のキャッチボールを巧みに。
場が華やぐ。

メニューにある「リクエストチェキ」と言うのは、お給仕をするウェイトレスや注文を受けて働く石川の「これだ!」と思った瞬間を、マネージャーがチェキに撮ってくれるもの。
マネージャー判断で許可が下りない事もあるが、客の方も或る程度分かってやっているので、そこで一と笑い。

団子はみたらしとあんこ。
みたらしは葛から、あんこは潰さない小豆煮状。
団子は豆腐と白玉粉でつくった柔らかめのもの。
みたらしは甘さ控えめ、醤油の香りがあとから鼻に抜ける。
小豆煮も甘さ控えめで、つぶあんが苦手な私でもおいしくいただけた。

野菜スープは半割りにした新玉ねぎと刻んだ春キャベツ、千切りにしたニンジン、無添加ベーコンを柔らかく煮込んだもの。

仕上げにブラックペッパーを振り、パルミジャーノを削ってパラリ。
発色剤などの入ったベーコンを煮込み料理に使うと、どうしても妙な色になったり、えぐみが出たりするが、そうしない事でベーコンのうまみだけが生きている。
野菜とチーズに含まれるグルタミン酸と、ベーコンに含まれるイノシン酸の相乗効果。
ベーコン以外、ほぼ嫌いなものだけで構成されているのに、きちんと旨い。
このスープに、あの団子を入れてもうまかろう。

この企画でも、手掛けたMVでも、かつてやった写真展でも、石川野乃花は好きな事ややりたい事を形にする為の労力を厭わないし、その為の技術や経験を軽んじない。
自分に技術が無かったり、足りなかったりすれば借りて来る。

様々な展示や催し、成果物を見る基準が石川野乃花になってしまっているので、ハードルが上がり過ぎて居るように思われなくもない。

(2023.04.29 記)

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