第五回 写真人会 写真展 「ライカ 50mmレンズの世界」
自転車転がして半蔵門へ。 歯応えのあり過ぎる企画展で、土日で延べ二回観覧。
年表や構成図、外観写真などもふんだんに。
出展者は
市川泰憲
上野 由日路
岡田祐二
原 昌宏
牧野浩典
諸田 圭祐
山田 淳
「ただの好事家の集まりでござい」と偉ぶるところは欠片も無いが、浅黄の頭巾を脱げば何の何某と言う筋金入りの好事家の集まり。
蘊蓄一つとっても嘘や誤魔化しが無い。
岡田祐二のノクチルックス撮り比べに引き笑いが止まらない、凄い。
私の所得では一本買うのも難しいノクチルックスを、手持ちのもので各種撮り比べ。
それも作例っぽい作例ではなく、きっちり「写真」になっている。
市川泰憲はズマリット50mm/f1.5でフレアの出る写真。
「あー、こーなっちゃうんだよなー」
と言う記憶が蘇る。
(でも、そうではない時の写りは良い。)
諸田 圭祐は癖のないレンズでちゃんと撮った、撮影会にライカを持ち込むお手本になるような、ちゃんとした写真。
レトロモダンを強調しすぎたような撮影スタジオの作為が、なんとなく緩和されたような気さえする。
牧野浩典の「ライカF2級レンズの始祖 Ernst Leitz SUMMAR 5cm F2」
文章と写真は自身のブログに掲載しているものとほぼ同じ物。
私も偏愛するズマール。
癖をアクセントとして生かし、慈しんで撮る。 レンズの癖に振り回されない。
難点や欠点はそれとして認め、受け入れつつ、美点を引き出して撮った作例に唸る。
上野 由日路の作例は逆にレンズの癖だけ引っ張り出して論ったような物。
「オールドレンズ」と言う市場を創り出し、流通を活性化させるために極端化して分かりやすくしているのかもしれないが、私の好きなレンズを貶めるような使い方をされるのは不愉快。
原 昌宏のエルマー/ヘクトール各種撮り比べ。
バラしてケガキで入っているシリアルらしき数字を調べるなど、好事家として病膏肓。
私はエルマーよりヘクトールに惹かれるのだけれど、その絵解きをしてくれたのが山田 淳の展示。
「エルマーは、びっくりするくらいのパーフェクトなレンズであると感じる。」
「ズミクロンはエルマーと同様の『パーフェクト・レンズ』である。」
ズミクロンと新旧エルマーで個性の強いレンズを挟む構成も良い。
優等生すぎて詰まらないというか、私にとっては過剰品質であると感じる点が言語化されており、腑に落ちた。
作例の撮影にはミラーレスデジタルも多用されており、出るんだか出ないんだか判然としないボーナスの使い道として、ライカレンズを使えるフルサイズミラーレス(中古)の購入を真剣に考えてしまう、実にどうも罪な写真展だった。
(2023.06.25 記)