石川野乃花生誕祭2023
午後から銀箱担いで押上へ。
芝居仕立てにして来るだろうと予想していたが、入場者特典の紙チケットを見て、予想は確信へ。
メンバー全員を巻き込んだ影アナから芝居は始まっており、注意事項の中で声出しアリのライブである事を強調。
そこからアンコールを促す流れになり、アンコールからの開演。
最後の曲を終えて感想を語る石川に対して、妙によそよそしい周囲の人々、噛み合わない会話。
不条理劇の中で、逆行する時間。
時折映し出される逆廻しの映像、遡るように進むライブ。
曲間に呟かれる、歌詞の中のフレーズ。
不条理劇で客においてけ堀を喰らわせつつ、手練のライブで客を巻き込んでいく。
あっけにとられたり夢中になったりしているうちに、
「時間をさかのぼり過ぎちゃいました」
「2001年宇宙の旅」を逆廻ししたように、サルに戻ったメンバーが登場して、皆でnotallの怪曲「あふれゴリラ」を歌って強引に大団円。
サゲは強引でくだらない方が良い。
まさに「バカ負け」。
そうそう、これこれ、こういうヤツ。
劇場に足を踏み入れた時に、否、劇場に向かう所から、更に言えばチケットを買ったところから、石川の仕掛けた芝居は幕が開いていて、客は客でありつつ、巻き込まれ型の「芝居を構成する一員」でもある。
そして、巻き込まれた客を振り回し、当惑させ、最後は突き飛ばして夢から醒めさせる。
劇中で流されるイメージ映像は、それ単体で見たくなる仕上がりだったし、幹を太くして枝葉を追わない、シナリオも上手く作ってあった。
早着替えをしたドレスも、メンバーに着せた揃いのサル衣装も特注だろうし、映像素材で足りないものは追撮もしているのは想像に難くない。
休みと貯蓄を磨り潰して生誕祭と言う実質的な自主興行に注ぎ込む。
どうかしている上にもどうかしているが、この度を越したところが石川野乃花の面白さ。
石川野乃花は、アイドルをやり、映像も撮り、芝居も書く。
アイドルの枠を超えるのではなく、アイドルと言う枠そのものを拡張している。
「アイドルをつくるアイドル」は、「アイドルを拡張するアイドル」となった。
キリストを超えたかどうかは分からないが、アイドルとしての持続可能性を自ら体現して見せている事で、少なくとも濱野智史は超えた。
これは間違いない。
拡張した成果物が世に出る、2023年でありますように。
セットリスト
(2023.01.28 記)