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石塚汐花×福島裕二写真展-3286日-
仕事帰りに2日続けて AtelierY -青山-へ。
アイドルカレッジのメンバー、石塚汐花がグループを卒業し(この場合は「卒業」が相応しいだろう)アイドルとしての人生に終止符を打つにあたっての、区切りの写真展。
3286日は、アイドルとして活動した日数を表す。
初日で且つ在廊日と言う事で、中々の盛況。
在廊イベントは、写真より本人に用のある人の為のものであり、写真そのものとは向き合いにくい環境にある。
石塚汐花は写真展を見に来た一人ひとりに声を掛け、写真展のフライヤーを渡していたが、「自分の為の写真展」を開催できた嬉しさや晴れがましさが、その振る舞いから溢れていた。
翌日、写真そのものと向き合う為に裏を返す。
エントランスからの導入部は、大きいものを横に並べて6点、小さめの物を3×4で纏めて12点、ライブハウスで歌い踊る石塚汐花。
写っているのは生誕ライブの衣装と思しきものを纏った石塚のみ。
他のメンバーはおらず、マイクもステージドリンクも1本
アイドルカレッジのライブから、石塚汐花の要素だけが抽出されて提示される。
ライブハウスをライブハウスたらしめている調度や照明などは適度に写るが、客席の方向にはカメラは向かず、客(そして発せられる客の瘴気)は写らない。
客がそこに居る体で振る舞い、いつもの目配り気配りは見せている石塚の目には、恐らく客の姿が映っていて、石塚を通して不在であるはずの客の存在を感じさせる。
最初の6枚の6枚目、次の12枚の下段中央。 マイクを胸の前で持ち、ステージ中央に立つ姿。
このモチーフは、この他にも何カットか。
ステージ撮影の前段だと思われる、同じ髪型(高めのツインテール)で衣装ではない服を着て歯磨きをしている場面。
楽屋での姿、出番前の風情。
水の使えるスタジオ、屋上、夜景etc...
福島の写真にはよく登場する場所だが、当然ながら撮られる人が変われば上りも変わって来る。
ランジェリーなどの衣装もあり、表情に強張りのある写真もあるが、解きほぐされた写真もあり、使い慣れた場所ならではの「引き出しやすさ」があるのかもしれない。
外ロケでの撮影分は、東武亀戸線沿線。
亀戸から曳舟までの4キロ足らずの距離をS字を描くように走る路線。
踏切は路地裏にまで数多あるが、カーブしているところは少ないので、場所は特定しやすいかもしれない。
傘をさしていたり、路面が塗れていたり、カラリとは晴れずに湿り気のある絵。
ぐるりと見て回って最後の壁に、B0作品の三幅対
左に屋上の夕景、笑顔で風に吹かれるカット。
右に、ランジェリーでシャワーに打たれるモノクローム。
当たるがままにした水が、涙の如く頬を伝う。
そして中央。
水の使えるスタジオで、両手で掬った水をこちらへ差し出すカット。
指の隙間から雫が滴る。
全体が見える距離から徐々に近付くと、視野に収まり切らなくなる位のところで、差し出された両手が急に浮かび上がり、こちらに迫ってくるような感覚に捉われる。大伸ばしにして初めて感じられるもの。
少女期の(そしてその後のモラトリアム期の)大半を占めたアイドルとしての自分に別れを告げ、幕を下ろす石塚汐花。
アイドルとしての来し方と、これから始まるであろう何かを、明示的にまた暗示的に見せてくれた写真展だった。
(2021.10.16 記)