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11.13 うるしの日

「きょうは疲れたから小説を書くことはお休みしようと思ったんだ。仕事の打ち合わせが夜に入っていて、さっき終わったばかりなんだよ。十時半っていう時間は、飲んでなけりゃほぼ真夜中だろう。
なのに、俺はバカだから先に溜めて書いてもいなかったんだ。夜に打ち合わせがあることは分かっていたのにな。
帰り道できょうの分を書いてないことをふと思い出したんだ。こういう時の直感って何なんだろうな。忘れないように出来てるんだな。感心するよ。
帰宅したら身体は泥のように重いし、昼以来飯も食ってないし、やっぱりこりゃお休みしようと思ったんだけどね。
一回止めたらまたやると思うんだ。
休むことに罪悪感が無くなることが一番怖いことだと思ってさ。
飯も食わずに居間の地べたに座って、小説を書くことにしたわけだ。
でも、何にも思い浮かばないんだよ。このままじゃすぐ明日になっちまう。だってもう十一時を過ぎてるんだから。
なんかいいアイデアは無いかなと、うんうん唸って書き始めたのが漆の話だった訳だ。
漆塗りを知っているかい?赤やら黒やら綺麗なもんでさ。最近はガラスに漆塗りをした食器なんかも出てきているんだ。
オシャレでいいよ。プレゼントにも最適だ。
そして俺はあの、濃くて深い赤色と、一切他を寄せ付けない潔癖さを持つ黒色のイメージを持ってして恋愛小説に仕立てようと思ったわけだ。
赤色が女で黒色が男だと思ったろ。俺は天邪鬼だから、黒色が女で赤色が男だ。
別に色分けで男女の差をつけるなんてナンセンスなんだよな。色はただの色なんだから。意味をつけたがるのはいつだって色じゃなくて人間の方だ。
ん?それでそのあとうまく恋愛小説に仕立て上がったかって?
何を言ってるんだいお前さん。今これを読んでるんだから、そんなのできたわけがないだろうが。
言わせないでくれよ。いけずだな。
つまりは、あれさ。漆塗りに意味をつけたがるのはいつだって漆じゃなくて人間の方だ。
そこに意味なんて無かったよ。漆は漆であるだけで、そりゃ美しいもんだったんだよ。
余計なことはさ、いらないんだ。
ドントシンク、フィールだよ」

11.13 うるしの日
#小説 #うるしの日 #漆 #JAM365 #日めくりノベル

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