2.9 漫画の日
この世界の狭さに驚いたのは四歳くらいのことだった。
私は畳一畳の上に座り込み、画用紙にクレヨンでありもしない世界を書き続けた。
親はきっと私が何より絵を描くのが好きな子供だと思っていたに違いない。
でも本当は私は、紙の上にありもしない世界を毎日毎日作り上げていたのだ。
在る物と無い物しか存在しない世界は窮屈で、肌感覚として地球の狭さを悟った。
在ると無い以外の広がりが欲しくて私は一心不乱に色を塗り続けた。
在る物で無い物の上に在るを生み出しては創造の世界にのめり込んでいった。
少し大きくなると、私は在ると無いの瀬戸際の世界を漫画に求めるようになった。
私では考えつかないような世界が無数に広がっている。その熱量に私は歓喜した。
想像力は在ると無いだけの世界を広げてくれる、唯一無限と思えるツールになった。
世の中にたくさんの物語が産まれて、無限の端っこを更に広げていって欲しい。
世界を開く扉はそこにあった。そしていまも膨張し続けている。
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