4.28 象の日、庭の日
朝起きると、庭に象がいた。
水も撒いていないのに、木々は露に濡れてきらきらと輝いている。
その眩しさの只中で、象は静かに瞬きを繰り返した。
彼か、彼女か、まあいずれにせよ象は大人しく、聡明そうな顔立ちをしている。
「おいおい、君はどこから来たんだい?まさか空でも飛んできたのか?僕の家の庭は、君には狭すぎるだろうに」
僕は冷蔵庫で冷えていたリンゴを二つ、象にプレゼントした。
象はしずしずと伸ばした鼻先でその丸みのある赤の冷たさを確かめると、器用にその鼻先で挟んで口元へと運んだ。
シャリシャリとりんごが崩れる時特有の音がして、だんだんと甘く爽やかな芳香が漂ってくる。
「それを食べたら、お家にお帰り」
象は一生懸命シャリシャリとリンゴを味わうと、ぺこりと一つお辞儀をして煙を出しながら消えてしまった。
庭には露に濡れて輝く木々と、冴えない色の服を着た僕、それにりんごの香りだけが残った。
連休中の一日の、不思議な話である。