いつかの細切れ肉
細切れ肉が,好きだ。
ステーキを食べるより,細切れの焼き肉やしゃぶしゃぶを心行くまで食べる方が好きなくらいである。
固い肉を柔らかく感じることのできるあの厚みはちょうどいい。
そして,脂っこさもない。
美味しい。
久しぶりに細切れ肉で焼き肉を作った。
トレイの上の細切れ肉を一枚一枚剥がしながらフライパンに入れていると,懐かしい光景が見えた。
大学二年のときだったか,友人と一緒に鍋パーティーをした。鍋の具材には大量の野菜の他,細切れ肉もあった。
友人は鍋の準備をしながらこういった。「誰か肉ほぐしといてよ」
それが,私にとって,"細切れ肉を一枚一枚きちんと剥がすこと"のデビューだった。
それまで,私にとって細切れ肉は,パックを逆さにしてフライパンに入れるものだったのだ。
彼女がそう言ってくれて,改めて肉を見ると,細切れながらもきちんと厚みがあって一枚一枚いいお肉である。
美味しい。
なんて,箸で肉の厚みを味わいながら焼くのが好きになった。
あれ以来,ほとんど細切れ肉を剥がさないことはない。
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