鯛ヶ窪橋
埼玉県には鯛ヶ窪橋という橋があります。その橋を何度か通っている時にふと思いました。埼玉県には海が無いのです。それなのに鯛ヶ窪橋。鯛とは。何故そこに鯛がいらっしゃるのか。こういう事を言うこと自体、埼玉県人の皆様におかれましては厭わしい事なのかもしれません。とりあえずそれだけ先に謝っておきます。すいませんでした。私も本籍地は違いますけども、現在は埼玉県人です。埼玉県には御世話になっています。エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例もすごいと思います。浦和レッズのステッカーは車に貼ってないんですけども。でも、水曜どうでしょうのステッカーも貼ってないので。それに、そもそも車も持ってないですし。
で、鯛ヶ窪橋。そんなに有名な橋ではないみたいです。変換が一発で出来ないんです。鯛ヶ窪橋。隊が久保橋とかって返還、変換されるんです。だから、そんなにポピュラーな橋では無いんだと思います。でも、私は何度もそこを通っていて。もちろん最初は別に気になりませんでした。橋の名前じゃんって。でも、何度目かにふとね、思ったんです。
「鯛ヶ窪橋とは」
って。埼玉県って海無いじゃん。川はあるけどさ。荒川。でも、海無いじゃん。荒川に鯛とかいたのかな。いないんじゃないかな。分からないけど。でも海無いのに。それなのに、鯛ヶ窪橋って。そんな事あるんだろうかな。いや、まああるんだろうけども。でも他の場所はいいよ。別に。私に関係ない事だから。ただ、鯛ヶ窪橋は。鯛ヶ窪橋は気になるなあ。よく利用しているからかなあ。気になるなあ。海が無い埼玉県に鯛ヶ窪橋っていうのはなんか気になる。普通の女学生にしか見えないのに退魔忍ですって言ってる人みたいに気になる。そんな訳ないだろって思える。気安くそんな事言ってたら、大変な事になっちゃうよ。感度3000倍とかにされんぞ。そんな事になったらどうするの。心配だよ。
鯛ヶ窪橋の事を調べることにしました。
浦和のPARCOの図書館に行って、郷土史みたいなのを調べてみたり、区役所に併設されていると図書館に行って、郷土史を調べてみたりしました。しかし気がつくと、すぐに文芸誌を読んでいました。好きな作家のハードカーバーの本とか。kindleに無い奴。文庫とか。kindleに無い奴。自分の興味のある本を読んでいるんです。kindleに無い奴。困りました。郷土史に興味がないのではないかと思えました。しかし、それではいけない。私はそう思いました。
せっかくそういう気持ちがあるんだもの。そういう気持ちがあるうちに、何かきっかけでもいいから、何か、何か掴めたら。掴みたい。そう思いました。そういう事を調べている間にも淀みなく日々はやってくるんです。この事ばかりに構っていられなくなります。
鯛ヶ窪橋ってなんで鯛が入ってるのかな。海が無い埼玉県で。鯛。なんでなんだろう。
そんな時でした。
ふと、ある事を思いついたのです。鯛はともかく、ヶ窪に何か秘密があるのではないかと。ヶ窪によって鯛が打ち消されている、反転させられているのではないか。と。そう思い至ったのです。だからまあ、例えば、マジックザギャザリングとかであるじゃないですか。打ち消しとか反転みたいなの。効果。あるインスタントの、そうですね。例えば、赤の焚きつけとか、そういうのを、青で、打ち消したり、白で反転させたり。そういう事。そういう事があるのではないかと。私は思ったのです。ヶ窪によって鯛が打ち消される。反転させられる。打ち消すというのはつまり鯛が無くなる。鯛が鯛という意味ではなくなる。反転させるという事はつまり鯛が鯛ではなくなる。海に関係なくなる。という事に。
なるのではないか。だから埼玉県で海が無いのに、鯛ヶ窪橋は鯛ヶ窪橋という名のままで、存在を保っているのではないかと。
私はそう思ったのです。
仮説を立てると、仮説を立てる前よりも物事が進みやすくなります。掴みどころが出来るというか、自分を支える自分以外の存在が出来るというか。スタンド。ジョジョは知らないのであれですけども。例え、その仮説が間違っていてもいいんです。何のつかみどころも無く、闇雲にいるよりは前向きになれます。仮説ってそういうものですよねきっと。仮設住宅だってあると助かるでしょ。例え、それがコンテナハウスでも野ざらしよりはずっと助かる。雨風がしのげる。あとはまあ、固執しすぎない事ですかね。自分の仮説に。
そんな仮説を携えている時、地元の郷土史家という方と会う機会に恵まれました。浦和PARCOの図書館で待ち合わせという事で行ってみると、うちの父みたいなビジュアルの、外見のおじさんがいました。うちの父みたいなビジュアルというのはつまりトレーナー、スラックス、上にユニクロのもこもこ。靴流通センダー、ホーマック、ホームセンターで買った500円の靴。みたいな事です。
挨拶もそこそこに、私は鯛ヶ窪橋に関しての仮説を打ち明けました。でも、どうやら違うみたいでした。郷土史家のおじさんは、
「昔この辺りは海だったからです」
と言いました。
そんなのねーよと思いました。海かどうかじゃなくて。それ、そのセリフ。ハトのおよめさんのハトビームの140に出てきたセリフなんです。山奥にある酢コンブ工場の。
全然答えになってないわ。っていうやつ。
そんなのねーよ。
あとやっぱ昔は海だったって言うも嫌だなあ。それで全部済まされちゃうのやだなあ。
マジックザギャザリングじゃねえんだからさ。神の怒り。ハルマゲドン。カタストロフィじゃねえんだからさ。ジョークルホープスじゃねえんだからさ。大変動じゃねえんだからさ。昔は全部海だったんですよ。全部。
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