秋ヶ瀬フェス
荒川は昔すげーやばい川だったらしい。
その名の通り荒々しかったらしい。荒神様みたいな川だったらしい。彼の川はしょっちゅう水害だの、水没だのって言うのを引き起こしていたのだという。それで村とか集落とか田畑とかを流してたらしい。流しまくりでのみまくりでマジパナい感じだったそうだ。
荒川がそんな事ばかりを、盗んだバイクで走り出して夜の校舎のガラスをバットで割りまくって、なおしてもなおしても割りまくっていたみたいな感じだったのは、彼の川のその当時の御姿に理由があったのだという。
その昔、荒川はもっと直線的な形をしていたのだそうだ。まっすぐ。人間で例えると、まっすぐって言うのは好まれる。好まれやすい感じかもしれないが、でもあまりにもまっすぐだと、周りがちょっとなんとなく疲弊するって言うか。そういうのあるじゃないですか。マグナムセイバーってまっすぐ、直線を走るのが得意だったけど、でもあんまり速くてもさ、あんまりにもぎゅいーんって行かれてもさ。そらまあ困るじゃないですか。周りが。またかよってなる。豪君だって困ってたかもしれない。少しは。走るのも疲れるし。
川も同じだ。昔の直線的過ぎる荒川は直線的過ぎてそれで雨降ったりすると暴れまわっていた。水のスピードもすごかったらしい。リニアモーターカーくらい出てたかもしれない。そうなると水量もすごかっただろうし、力だってそれに比例していただろう。周りに止める人がいない酒席みたいな感じ。周りに止めてくれる人がいないために、時々というか、しょっちゅうというか、悪い酒になってダークサイドに落ちてしまった人みたいな感じだった。そんで暴れる。カンナの手持ちのルージュラみたいに。手が付けられない。
でもこのままではいけないってなって。昔の人達が頑張って川の地形に手を入れたんだという。直線的過ぎる荒川の何か所かにカーブを設けた。その結果、荒川の水の速度は時々あるカーブによって落ちて、それで静かになったそうである。それはすごい事だなあと私はその話を聞いた時に思った。人間が自然をどうこうできるわけねえ。どうこうできると思ってるのは傲慢だ。と私は思ってる派だけどこの話には感心した。すごいなあって。プロジェクトXでやればいいのになあって。
秋ヶ瀬公園はさいたま市にある公園です。大きな公園です。雑司ヶ谷霊園より新宿御苑よりも大きな面積があります。東京事変の心って曲の中にも出てきます。ヘリポートや秋ヶ瀬の森があったりします。その秋ヶ瀬公園のすぐ横に満々とした荒川が流れています。
その秋ヶ瀬公園で近く秋ヶ瀬フェスというのが開催されるそうです。これは実に前回のフェスから六年ぶりの開催だそうです。どうして六年ぶりなんでしょうか。六年開いた理由は何なのか、あるいは六年開催されなかった理由は何なのか。気になったので、Instagramのページに行って、そこからメッセージで尋ねてみることにしました。
「秋ヶ瀬フェスが治水祭だからです」
という返答が来ました。
治水祭。
図書館に行って調べてみますと埼玉県熊谷市の荒川神社にいらっしゃる巫女様がある朝に、御神託、啓示を受けたのだそうです。
「今年、荒川の治水祭を行いなさい。行わなければ荒川によって多くの命が奪われる事になる。場所は秋ヶ瀬公園が良いだろう」
これが六年前の事だそうです。その時、どのような事が秋ヶ瀬フェスで行われたのかはわかりませんが、六年前の秋ヶ瀬フェスでは会場の一部が水没したんだそうです。台風が来た為にその様な事になった。とそんな風な説明が書かれはていましたが、なんとなく変な想像をしてしまいます。邪推というか。秋ヶ瀬フェスが行われたからそれくらいで済んだのか。それともその時の秋ヶ瀬フェスで不手際があったのか。とかなんかそういうの。
ただとにかくそんな訳で、今年六年ぶりに秋ヶ瀬フェスが開催されるそうです。という事は今年も荒川神社の巫女様に御神託が訪れた。いらっしゃったのでしょうか。その辺の事はよくわかりません。でも何とか今年は無事に終わってほしいなと、他人事ながら思う次第です。まあ私も埼玉県人ですのでね。
ある朝、いつもよりも早く起きてしまったので、散歩で秋ヶ瀬公園に行ってみました。
秋ヶ瀬公園の朝は早いです。彼の公園は大体、毎日五時から開園されています。秋ヶ瀬公園は大きな公園ですので、駐車場も何か所もあります。そしてその駐車場の箇所箇所ごとに何かの楽器を練習したり、スケボーの練習をしたりしている人達がいます。彼らは車でどこか遠くから秋ヶ瀬公園にやってきて、そういう事を行っています。集合住宅とか家と家の距離が近い都会ではなかなか自分の好きな事の練習が出来ないのでしょうね。
朝、秋ヶ瀬公園に行くとそういう光景を眺めることができます。それは秋ヶ瀬公園散歩の楽しみの一つです。Nbox系の車のトランクの所に座って見た事も無い楽器の練習をしている人や、オリジナルなんじゃないかと思える体操をやっている人がいたりします。またお馴染みのジョギングしている人も居ます。そういう人達を横目に見ながら自身もプラプラと歩きます。秋ヶ瀬公園は新宿御苑みたいに掃除が行き届いている感じではありません。どこぞかしこぞに枝や葉っぱが散らばっています。そういうのもまた、なんというか、なんか朴訥な感じがあって良いのです。
でもその日は違いました。どこを見ても枝も葉っぱもゴミも何一つ落ちておらず、ジョギングしている人も一人もいませんでした。
みんなバグパイプの練習をしていました。
秋ヶ瀬フェスが近づいてるからなのか。みんなして固まってバグパイプの練習をしていました。何かの曲を演奏していました。何の曲かは私にはわかりません。ただ、どうしてバグパイプの演奏って聞いているとあんなに神聖な感情が芽生えるんでしょうかねえ。
秋ヶ瀬フェス。無事に開催されてすごく盛り上がって無事に閉会されたらいいですね。
あ、ところで、図書館で治水祭の事を調べてて偶然に知ったんですけど、大阪の道頓堀川にカーネルサンダースを投げたり飛びこんだりするのも治水祭の一つなんですってね。それで時々、人が死んだりするのも治水祭の結果によるものだから仕方ないんだとか。
秋ヶ瀬の森。道頓堀。メメント・モリ。
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