サンドレス
その日、世界のいたる所で何の前触れも無く、突然にサンドレスが降って来た。雨のように大量に降った所もあれば一枚二枚がふわり、はらりと降った所もあった。大量に降り注いだ所では当然騒ぎになったが、少量の所では目撃者がいない所もあった。大量に降ってきた箇所でそれを目撃した人間にしても、どこかからそれが降って来たのかわからなかった。サンドレスは本当に全く何の前触れも無く降って来たのだった。どっかの製品工場から風、あるいは事故で飛ばされてきたのではないかという様な、勿論そんなの釈然とはしないが、思考が大半の人の頭の中に湧いた。
後日あれはファフロツキーズ現象だと述べた人が現われた。メディアに出た。人々は、ああ、そういうのかと、納得、処理した。
ファフロツキーズ現象。それは解明されていない件の現象についている名前だ。何の前触れも無く突然、そこ、その場所にはありえないものが空から大量に降り注ぐ。例えば海から何キロも離れたその場所に、魚が大量に降り注いだりとか。蛙が大量に降ってきたりとか。肉が降ってきたとか。そういうのの事だ。歴史は古く昔からそういう事が頻繁ではないけど、ちょくちょくあったらしい。日本でも大昔の文献に残っていたりするそうだ。
その原因については幾つかの説がある。鳥とか竜巻とか悪戯とか錯覚とか。実際、過去に起こったファフロツキーズ現象は全部それらの説のどれか、あるいは複合的な要因があってそうなったと証明できるかもしれない。ただ、それらを実際にその場で見た、体験した人達からしてみたら何が起きたのかわからない、理解できない。というのが正直な所だったろう。
天変地異が起きたのではないか。神の怒りではないか。世界の終わりではないか。そういう風に感じる人だっていた。いるだろう。
たとえ証明されたとしても、それが必ずしもその人達の心を解放するとは限らない。
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