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夢日記-1112

地元の友人が遠くへ引っ越してしまうということがいつの間にか決まっていた 8月末にカネコアヤノのライブを控えているようで、それまではこちらに残るらしい しかしそれもあと数日で、帰省のタイミングが合わずろくに顔を合わせられないまま彼女は遠くへ行ってしまうことに                    (転換) また別の地元の友人と熱海までフェリーで2泊3日の小旅行をすることになり、そのための準備に追われている 久々に会いたいなと思ったタイミングでちょうど連絡が来て、それは偶然的に

    • fall(ing) revelation

      夏の冒頭あたりからずっとノンブルを振り間違えているし、身体に流れてくるのはうまく聴き取れない歌詞ばかりだけど、和音はいつでもそこで調和しているから安心して目を閉じることができた。そういう夜は何度かあった。薄目をあけたノートパソコンに文字を打ち込む。キーボードの隙間から漏れる光が好きで、わざと少し暗い所で触りたくなる。大切な映画はいつも一人で観たくなるけど、このあいだ大切な友だちと観た映画がそのまま私の大切な映画になってほんとうに嬉しかった。レシートのような半券はもう意味を持た

      • 連作「エスケープ」

        + 空想の仮留めをして四肢を伸ばす 回転ベッドに鋭角はなく 星が丸いのは回っているからで風化した犬歯であなたを噛んだ シナプスを辿って盗んだ月の数(星は宇宙網より引用される) 書肆よりも前に並んだ文字列は意味がほしくて沈黙を守る 頭角の現れる時代 ぼくたちは逆光を浴びながらその紙をめくった 現(うつつ)との境に位置するビオトープ 生息域分断の対策 指を折るたびに数の合わない階段は諦めて廊下へ離脱せよ 偉大なる音楽家の遺影として見下ろすのは異国の教室 産声には

        • over spilt spirit

          だんだんと生活から音や色が抜けはじめていることにぼんやりと気がつく頃には、いつの間にか吃りを含んだ綴り方しかできなくなってしまっていた。わたしたちはいつも架空に浮かぶ月のことを想うだけで見上げようとはしなかった。あの日にあなたと何気なく空を見上げたのが最後で、もうそこに月はなかった。それでもわたしたちの中に浮かんでいれば大丈夫だと思っていた。決壊が起きる。壊れた蛇口から雨が降り出す。空は虚のように明るくなる。捻っても捻っても涙は止まらず雨が止む気配はない。給水塔が弾けてできた

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          逃避行記

          坂を下り続けるといつも同じ潮の匂いに辿り着く。港町には坂が多い。人々が海に集うとき、そこには足りないたましいがある。(ように見える。)この星は球体で、隅で泣くことはできないけれど、海はすべての先だから好き。いつも立ち尽くしたくてここへ来る。呼吸できるかできないかの、ギリギリのところで生を感じるのが好き。私は海を前にするたびに堤防や海岸の端に立ち、ぼんやりと目の前の出口を眺め続ける。私はそこに立ち尽くすことしかできない。(私はいつもこうして立ち尽くすことしかできない。)私は私の

          逃避行記

          潮騒

          浴槽で身体を揺らして波を作る。その波に呑まれるふりをする。ほんとうの海は真っ暗で足が透けたりなんかしない。それを知っていて白波を立てる。遠くにニューアカオの文字が見える。この景色が見たくてここまで来たというよりも、海辺の空気が吸いたかった。地元に帰れば海がある。だけど私は私の在る場所を遠ざけたかった。同じ潮の匂いがする。流れ着く波の先に触れたら柔らかくて、指先を舐めたら思った何倍も塩っぱかった。遠くで花火をしている人々の群れが光る。私は一人でbetcover!!の島を聴いてい

          最近

          39℃の熱があると文字通り寝込むことしかできない。ただひたすらカネコアヤノの「わたしたちへ」を繰り返し再生しては無理やり目を瞑ってやり過ごしていた。部屋の片隅でくすぶる熱を抱えながら、変わりたい、変われない、変わりたい、変われないを反芻しながら息継ぎのように浅い眠りから何度も覚める。 いつも目が覚めた直後には鮮明に夢を覚えていても、結局すぐに忘れてしまうのだから次こそは書き留めておこうと思うのに、わたしはいつもその思いつきごと夢と一緒に忘れてしまう。久々に日記をつけ始めてみた

          わたしの墓標

          文芸誌「watshi」にて私のエッセイが公開されています。以下のリンクからお読みいただけます。 ブックカバーの中に潜む恋、夕焼けで誤魔化した頬の火照り、雨粒に拭われていった涙のこと。チークでわざと頬を火照らせて、泣き腫らしたあとの瞳をつくる、そんなわたしたちの歪みがきらめくとき。 そんな私のずっと奥にある話です。誰かに気づいてほしくて、だけど気づかれるのもこわくて、ずっと奥に仕舞い込んでいたわたしのことを引っ張り出してしるしました。ここをわたしのひとつの墓標として。10代

          わたしの墓標

          ✴︎お知らせ✴︎

          いつもわたしを見ていてくださり本当にありがとうございます。今回はお知らせになります。 この度林やはさん(https://note.com/yahanoheya_)主宰の文芸誌『watshi』に同人メンバーとして参加させていただくことになりました。こちらの記事に私の詳しい紹介が掲載されています。 文芸誌『watshi』は、“女の子による女の子のための文芸誌”をテーマに、わたしという決して一言では語りきれない尊い存在を表現し、読者へ届けることで、すこしでも生活の光になることを

          ✴︎お知らせ✴︎

          閏日

          睫毛で計った雪の重さとちょうど同じくらいの汽笛の音が身体の外で響いている。目の前で崩れてゆくその白の綻び方があなたの泣き顔みたいな笑顔によく似ていた。たゆんで、 落    。        。     ち      。       。           。            る   。 時の (銃   。        。     声)       。がちょうど産声に重なって、わたしはわたしがしんだことにも、その瞬間にわたしがうまれたことにも気付かないまま、きのうのわた

          4年●組のあの子

          太陽の色を瞼の裏に映して見るのが好きだった。 ルーペを使ってわたしの足元のアスファルトを焼き払ってしまおうと思い立った時、集合の合図が横切って、光を遮る手が昇る。瞼で感じるその光の温度よりも、それを遮る手のひらの体温の方が高いことには気付かずに。きみの後ろに並んでいると前ならえの空白も突然こわしてみたくなる。ピンと伸ばした腕をほどいて急に抱きついても笑って赦してくれる子のことが好き。わたしが水色であの子がピンクだったけど、本当はわたしもピンクになりたかったことだけ今でもずっと

          4年●組のあの子

          信じたい嘘

          ひびの入ったデスクトップに映る顔がひどく歪んでいる。鉛のように重たい身体は次第に布団の内側へと沈んでゆく。潜った先で見つけた実像からいつの間にか目が離せなくなっていた。磔の口角。虹彩のアルゴリズムは簡単にコピーアンドペーストすることができてしまうから、きみがきみで在り続けなきゃいけない意味もいつの間にか分からなくなってしまった。結局最後まで言葉にしなかったことがすべてだったし、一緒に歩いた道だけが本当だった。そこに写る笑顔よりもそこで一緒に目にしたものの写真の方がよっぽど信用

          信じたい嘘

          渚に/て//

          ひとつひとつ殺意を込めて順に息の根を絶やしていく仕事。海の映像がまたひとつ乱れて砂嵐に変わる。砂の城はきみの指先にいとも簡単に壊されてしまって、そのままわたしはさらに大きな波に呑まれてゆく。こうして身を委ねているとき、わたしはいつもそこに打ち棄てられた遺体になったような気分でいる。毛先の靡く方角にひたすら進んでいるとまるで魂をくり抜かれたような気持ちになるのに、きみに手を引かれるがままに歩いている時は何もかもが輝いて見えるのが可笑しくってこわくなって結局すぐに振り解いてしまっ

          渚に/て//

          ✴︎お知らせ✴︎

          いつも私のことばに触れてくださり本当にありがとうございます。今回はお知らせになります。 この度BOOTHを開設いたしました。今後はこちらで作品を販売していく予定です。 今回はZINE、ポスター、ステッカーを作りました。是非覗いてみてください✴︎ 以下は作品紹介になります。 ZINE『ミラージュ』 詩、短歌、グラフィックのアンソロジーです。再編集・再構成した13篇の詩と書き下ろしの短歌12首を収録しています。ひとつひとつ手製本で、紙質やレイアウトにもこだわりました。 1

          ✴︎お知らせ✴︎

          陽炎

          クーラーで作った温度なんかに簡単に犯されてしまう体温を測ってわたしはわたしのことを分かった気になっていた。口実を編んで触れるひとの体温のことだけは信じられると思っていたけど、実際はそう信じていないとわたしがほつれてしまいそうだったから必死に縫合しようとしていただけだったのかもしれない。信じるって冒涜だから、わたしは嘘を信じたいし本当のことは信じたくない。わたしの瞼の質量はわたしにしか分からない。切り貼りされた言葉の裏に張り巡らされている繊維を紡いだのがわたし以外の誰かだと認め

          陽炎

          連作「no title」

          _ __ ___ 4の倍数で階段を駆け上がる きみを見つけて19で止まる 小指が尖ってピースにならなくて 眩しくて歪む笑顔に似ていた ニキビを潰すみたいに花摘み 首先の架空を斬った手で祈祷 あの頃は広角レンズで簡単に世界とか征服できちゃったりして わたしたちの瞳には宇宙 シャッターを切るたびに小さなビックバン ミラーレス 未来にきみがいなくても瞼の裏がお揃いでうれしい キューティクルを守るために朝礼時刻を破る子の胸のボタンはほつれ “あれ”と“それ”で通じちゃ

          連作「no title」