タコピーの原罪を読んだ

「タコピーの原罪」を初めて知ったのは、ジャンプ+に関するまとめスレサイトで、今一番アツいのはこれだろ、みたいな論争を目にした時だった。この手のスレは議論もあったもんじゃなく、新しい作品を探すようなものではないが、多くの人がタコピーの名前を上げていたので、気になって読んでみることにした。 

 とりあえず5話まで読んだ感想としては、「続きが気になる」の一言に尽きる。読んだ人は分かると思うが、4話までがプロローグ、始まりの物語となっており、現段階はまだまだ序盤も序盤だろう。逆に言えば今から読んでも全然追いつけるので、是非ジャンプ+で読んでみてほしい。

以下ネタバレ有り(極力ネタバレなしで書いた)

 この作品の魅力は、デフォルメされたキャラクターやいわゆる少女漫画チックな絵柄で描かれる、リアリティのある悪意だと思う。いじめ、虐待といったテーマを扱っている作品は多いが、だいたいの場合、浮世離れしたキャラクター設定や暴力描写などが原因で、なかなか心に刺さる作品が少ないというのが私個人の主観である。その点このタコピーは、なんとも言いがたい「質感」を持っている。例えば、主人公が虐められている原因であったり、主人公に向けられる罵倒であったり、どうにも「他人事」と感じられないような現実味を帯びている。

 そんなリアル志向の描写と、タコピーという、メルヘンとしか言いようがないようなキャラクターとのギャップもまたこの作品の魅力である。タコピーのように「幸せ」「ハッピー」を連呼して押し付けてくるキャラクターはサイコパスか薬中というのがマンガのお決まりだが、それに対してタコピーは「読者が共感できるキャラである」という点でオリジナリティのあるキャラだと感じた。1話を読んでいる段階では、ハッピーハッピーと連呼する訳の分からない宇宙人を、残酷な現実を知る少女が冷たい目で見るというような構図であり、我々読者は主人公の目線で物語を眺めるのだと思っていた。しかし、話数を重ねるごとに、主人公や主人公の周りの人間の狂気が目立っていき、4話でそれは決定的になった。正直、どのキャラクターも「等身大の感情移入できるキャラ」とは言い難いが、最も共感できるキャラを挙げるとするならば、恐らく多くの人がタコピーを選ぶのではないだろうか。人間よりも宇宙人の方が親近感が湧くほどの展開なのに、話が現実味を失っていないのは、この作品の描写の「質感」がなせる業だろう。

 もう一つ魅力を挙げるとするならば、無駄な残酷描写の少なさだろう。この手のダークな作品は、刺激的な描写、要するにエログロに走ることで読者の興味を惹こうとしがちだが、タコピーはそのような過剰な暴力描写がない(暴力描写がないとは言っていない)。これはエロは兎も角グロが苦手な私からすると非常にありがたい。刺激的な描写が少なくてもここまで引き込まれる作品を描けるのは本当に作者の技量の賜物だろう。

 最後に、もし私の感想文で興味を持っていただけたのなら、是非読んでみてほしい。恐らくタコピーは今後もさらに盛り上がっていくと思うので、今ならギリギリ古参を名乗れるのではないかと思う(かなり怪しい)。


あとがき

 初めてインターネットに文章を公開してみました。拙い部分はたくさんあると思うので、気が向いたらご指摘していただけるとありがたいです。



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