【SHUTIME】
また始まりました。
スノーボードの映像作品を観て屁理屈こねくり回すnoteです。
感性ではなく言語であーだこーだやるのは、スノーボーダー界隈ではかなりの少数派で肩身も狭いし報われにくい作業ですが、めげずにコツコツやっていくのが大切なんじゃないかと思っています。
ただし、仕事においても日常生活においても、やっているその行為自体の意味や目的が曖昧だと長く続けるのは難しいので、その行為をひとまずカテゴライズやラベリングをしておくのが重要です。
このnoteでやっている映像作品の感想文は、エモーションよりロジックでスノーボードを味わっていきます。あえていうなら右脳より左脳でスノーボードを楽しむ。
ということで「左脳ボード」「左脳ボーディング」とラベリングしておきます。
これで方向性が少しはっきりしてきた気がします。
こういう造語は単純でちょっとくだらないぐらいでオッケー。ただし、既出だったらすぐに変えるので気づいた方は一報ください。
The SHUshank Redemption
では今回のテーマは最近公開された「SHUTIME」
ライダー、Shuhei Sato。
ディレクター、Kiyomasa Kawasaki。
音楽はOlive Oil。
補足資料として良いのがこれ。
無料会員になれば、作り手本人による製作にまつわるエピソードが聞けます。
もう一つはこれ。
佐藤秀平のバックグラウンドがまとめられています。
この作品を味わうには、出演ライダーの背景や予備知識がすごく重要なので、作品と合わせてチェックしておくのをおすすめします。
では、この辺のだいたいの情報を共有できているものとして本題に入ります。
実はまだ誰にも言ったことがないけど、僕が密かにスノーボードの映像作品に対してよく使っている、ある評価軸があります。
それは「”ショーシャンクの空に”度」です。
外部のリンクだらけで読みにくくてすいません。
そして、”ショーシャンクの空に”を未見の人にとっては、7分弱のスノーボードムービーと個人の感想ブログを読むための予備知識としてこの映画まで観なきゃならないのかと、脱力感ハンパじゃないのではとお察しします。
注文が多くてすいません。けど、どんどん先へ進ませてもらいます。
「”ショーシャンクの空に”度」とはその名の通り、この名作映画で描かれている重要なテーマに共通のものが、スノーボードでどれだけ表現されているかを表す指標です。
もっと細かく説明していきますね。
”ショーシャンクの空に”で描かれている重要なテーマをざっくり一言でまとめてしまうと、「自分だけの穴を掘り続ける」です。
というわけで、スノーボーダーとして自分だけの穴をひたすら掘り続けて、ある日、広い空の下へと繋がった瞬間のようなカタルシスがあるかどうか。
これこそが「”ショーシャンクの空に”度」。
映像作品において、僕が最も好きな類のやつです。
実をいうと、少し前までは僕の中での”ショーシャンクの空に”アワード2022は、今年のCOWDAYでも受賞していた
「Keisuke Shimakata Full Part from Goofies the move part3」
でいいのではと思っていました。
なかなか異色な滑りをやり続けて、ここにきてスタイルをちゃんと確立したと言う点ではショーシャンク度はけっこう高かったのですが、ここにきて「SHUTIME」が一気に追越しました。
これからその要因をいくつか挙げていきます。
1.フルパートは成長を描かない
スノーボードの映像作品には色々な表現方法があるのは承知の上で、ショーシャンク度をより高めるためには、数分間の映像の中でライダーの葛藤や成長を描く必要はありません。
作品自体は「線」ではなく「点」でいいんです。
作品以前までのライダーの半生が「線」で、作品が出た時点で完結なのです。
ここまで色々あったが、作品が完成したことで一つのゴールを迎えられた。ということなので作品内では、あるスタート地点からの紆余曲折あってゴールでなはく、ゴールの瞬間だけをぎっしり詰め込んであればオッケーです。
まとめると、大事なのはライダーのこれまでの半生。作品はその一つのゴールとしてふさわしいクオリティであれば良い。
そう考えると、上記の補足情報はこれ以上ない「線」を創れていたし、作品は文句無しの素晴らしいクオリティなので、ショーシャンク度高すぎです。
2.セカンドキャリア
上記のインタビューやクラファンのページをみて分かる通り、彼の実家がスノーボードショップを経営していて、このタイミングでお店を引き継ぐことになったと語られています。
幼少期からスノーボードを始めて、おそらく恵まれた環境で実力を伸ばし、選手としてのピークを迎えて今に至る。そこでもしかしたら、人によってはこんな見方もあるんじゃないでしょうか。
「実家がショップなので、現役引退後のセカンドキャリアの心配が無くて羨ましい」と。
決して的外れなツッコミではなさそうだけど、僕個人的にはこのポイントで更にショーシャンク度がアップしました。
なぜなら、セカンドキャリアが保証されていて(実際のところは知らないが)、いつでも引退したり、適度な距離感でのやり方ができそうなのに、とことんライダーであり続けてるからです。
ショーシャンクでいえば、
塀の中の生活にそれなりに順応することも出来たはずなのに、揺るぎない信念で壁を掘り続けてたのかよ!というアレです。
彼がライダー現役時代に積み上げた実力と知名度と環境を活かして、上手にやっていく道もありそうに思えるのに、純粋にスノーボーダーとして体張りまくってるじゃねえか!
てことでショーシャンク度が3割増でした。
※現役を引退して順調なセカンドキャリアを築いている他の人達が、まるで塀の中に安住しているとは言ってないので誤解なきようお願いします。
3.空
4:25〜のロングショットで更に倍です。
あれはもうショーシャンクの空じゃなくて彼の空です。
4.その他
この他にも良いところはいくつもあるので軽く触れるなら、まずは音楽です。
Olive Oilがまさかこんなに合うとは驚きでした。この人の曲は単体で完結しているが故に余白が無い。だから具体的な映像にはマッチしないのでは、との素人考えはあっさりと崩されました。
2曲目の使い方も素晴らしい。日本語の歌詞がこんなにも有機的に機能しているスノーボードムービーは他に無いんじゃないかと思います。
あとは、技術的なところでいうと、4:09〜のジャンプについて。
アプローチでリップ直前までヒール、抜ける直前でトゥーに切り替えてのバックサイド720は、ハーフパイプで培ったスキルが垣間見える1シーンです。
こんな風にあれこれ言及して全方位外交するのも良いけど、そうなると一つの穴を掘り続けるとのは真逆のスタンスになってしまうので、これ以上はやめておきます。
今後、スノーボードムービーを観るときには、「ショーシャンク度」という観点でも楽しんでみてはいかがでしょうか。
追伸
シュータイムやらシューシャンクやら左脳ボードなどと、しょうもない駄洒落ばかりですいません。
追追伸
シュータイムはしょうもない駄洒落には含まれませんでした。すいません。
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追記
(2022.12.09)
1曲目のBGM、曲名が「TAKE ME」だったことに、あとになって気がつきました。
直訳すると、「私を連れてって」です。
この字面からはアレを連想せざるを得ませんね。
そうです。アレです。
いまだに擦られ続けてる大ネタ、「私をスキーに連れてって」(1987年)です。
このドラマのヒットから35年、ハードコアなスノーボードによって、新しい連れて行き方を見事に表現してみせました。
少なくとも僕自身はしっかり連れてってもらえましたよ。
というような解釈もどうでしょうか?
ちなみに例のドラマの公開は1987年。
ちょうど佐藤秀平が生まれた年ですね。
この情報でなんか上手い事言えそうな気もするけど、やっぱり無理でした。