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RealSnow2020 : Zak Hale

彼のおかげでみんな安心

今回はシルバーのザック・ヘイルです。


前々から事あるごとに言っているけれど、ザック・ヘイルの印象はこうです。

上手すぎて上手さが伝わりにくい

ザック・ヘイルが上手い。

これって、火は熱い。と言っているようなものなので、「なにを今更?」と思われるでしょう。

でも実際にザック・ヘイルは上手いんです。


今から5年ほど前。Burton Rail Days 2015でディガーとして会場にいて、ライダーの滑りを間近で見ていて感じたのですが、彼の滑りが断トツでスムーズでした。

レールでのトリック自体もそうですが、レールを降りてから次のアイテムまでの繋ぎに上手さが際立っていました。

パイプで言うところのボトムランとかパンピング?(パイプ詳しく無いので自信ないけど)

こういうとあたかも玄人アピールみたいに受け止められそうなので少し詳しく書くと、BRD2015は下の映像でわかる通り、レールセクションのあとにウォールで折り返すコース設計になっていました。

そして、やや裏話かもしれないけど、このウォールには上の方に乗っかれるようなちょっとした出っ張りを付けるという選択肢も用意されていました。

たしか公開練習が終わってから、ライダーの意見を踏まえてそれは付けずにやるとなったと記憶しています。

ウォールの上の方に出っ張りがあると、それを越えれるスピードが必要。そのためには手前のレールで攻めにくくなるというのが理由の一つでしょう。(一番の理由はウォールでの自由度が減ることかな)

それでも、ザック・ヘイルはレールセクションで結構複雑な技やっても一人だけやたらとウォールの高いとこまで上がっているので、彼の滑りを注視しているとレールからのアウト(着地)が上手いのでスピードを殺さず次へ繋げていることに気づきます。

なんでそんなに上手くアウトできるのかと思って見ていると、レールの上での乗り方が上手いから。

それはなぜかというとインが上手いから。なぜかというとアプローチが・・・・

つまりはスノーボードが上手いということで間違いない。

そんなこんなで、僕の中ではレールが上手い以前にスノーボードがめっちゃ上手いザック・ヘイルさん。いい加減リアルスノーの話に戻ります。


「ヤバい」はヤバい

このビデオパートの最初のキンクで、いきなりとんでもないハイレベルなことをさらっとやっているせいか、その後はずっと安心してみていられるという不思議な精神状態です。

危険と隣り合わせだったり、苦労の末にメイクするということが感じられるのがストリートの魅力でもあるのに、このビデオパートではそういった匂いは前景化してきません。

なぜか。

仮説というか勝手な解釈を書いてみます。


端的にいうと「俺はこんなに凄いんだぞ」を表現するためには、「俺にとってこんなのイージーですけど」と言うのが有効だから。ではないでしょうか。

逆を考えるとわかりやすくて、「俺はこんなに凄いことできたんだぞ」とストレートに表現すればするほど「俺にとってこれが最高到達点です。つまりは限界です」と言っているに等しくなってしまう。つまりは底が知れてしまう。という矛盾をはらんでいるのです。

だとすると、このパートでは上手さをことさら強調するような作り方は意図的に避けている。とも取れます。(個人の感想です)

この方針はすごく効果的だし、僕個人的にすごく好感が持てます。

仮に、レールの長さやギャップの高さ、メイクするまでの苦労に焦点を当てるような作りにすれば、スリルやインパクトがあるエモーショナルなパートに仕上げることも可能だったはずです。

でもそれとは真逆の、ロングショットで全体を俯瞰するようなカメラアングル、スローは極力少なく、静かな音楽、板の音もしっかり聞こえる等々。


即物的な「ヤバい」を引き出そうとするが故に、その一言で片付けられてしまう作品は少なくありません。

一方で、本当に実力があるライダーと、味付けではなく素材の良さを引き出すための撮影・編集によって、時間が経っても価値が下がらない作品があります。

後者を目指したザック・ヘイルとジャスティン・マイヤーは僕にとって文字通り「RealSnow」でした。


落ち着いた作品でとても良い、というレビューを書いているこっちがエモーショナルになりつつあるのでそろそろ終わります。


が、最後に少し付け加えると、

若さ故の勢いではなく、揺るがない実力によって長年スノーボード界を牽引してくれているザックさんがいるから、それぞれのライダーが安心してオリジナリティを追求できているとすら思っています。


あと、誤解が無いようにこれも。

僕はエモーショナル側に振った作品は嫌いだとか価値が低いなんて全然思っていなくて、「世界の車窓から」のような想像の余地を与えてくれるものもいいし、「ジャパネットたかた」の情報過多もついつい見入ってしまうから、いろんなのがある方が楽しいなと思います。


説明を重ねるほど分かりやすくなるどころか、抽象度が増していくのが僕の悪い癖です。


おわり


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