
【映画紹介】『シビルウォー』は思想・信条を超えて会話を生み出せるか?
どうも、こんにちは。kei_tenです。
今回は映画『CIVIL WAR(シビルウォー)』を観てきたので紹介します
※ネタバレあり
こちらは「もしアメリカに内戦が起きたら」というifの物語。構成はロードムービーであり、世代交代の成長物語としての側面も持っています。
人の怖さ、国家が揺らぐアイデンティティの葛藤、何が起きてるかわからない怖さなど、現代のスリラー映画として高い完成度があったように感じました。
特に赤メガネの彼のじわじわくる怖さは、ジャーナリスト陣の演技力も相まって圧巻でしたね。
映画レビューは数多あると思いますので、今回は「これって本当に現実ではあり得ないこと?」という観点から、2つの印象的な設定について語ってみたいと思います。
現実のテキサスとカルフォルニアは同盟を組まないのか?
「テキサスとカルフォルニアが同盟を組む」という設定は、アメリカをある程度知っているひとはあり得ないようにも感じますが、「そんなの自由と民主主義のアメリカじゃねぇ!」という国家のアイデンティティの根底が覆った場合は案外あり得ることではないかと思っています。
何故なら、第二次世界大戦は共産主義国家と民主主義国家がタッグを組んで、民主主義国家から台頭したファシズム国家と戦う戦争だったからです。
トランプ大統領時代にさまざまな揺らぎが生じましたが、それでも彼は選挙で選ばれたし、議会を経由する法治国家的手続きも無視した訳ではなかった。(大統領の特権発動はあったけれど、それも法的に認められていた)
もちろん、アウトと言える事態も幾つか起こりましたが、その後に裁判沙汰になっている点、次に民主党政権に移行したことからも、アメリカの国家としての機能は揺るがなかったと見て良いでしょう。
しかし、仮に大統領がそもそも選挙で選ばれなかったり、議会承認のプロセスが機能しなくなったらどうでしょうか?
こうなると保守やリベラルという枠組みを超えて、アメリカがアメリカたる所以を失う訳ですから、政治に熱心な2つの州が協力することも十分起こり得ると思いました。
日本に赤メガネは存在しないのか?
あの恐ろしい赤メガネの白人民兵は、現代のアメリカであればMAGA派の中で先鋭化した人から出てきそうという現実味がありました。
それと同時に、日本でもそう言う輩が生まれないか?という怖さも感じました。
世間的にはネトウヨと呼ばれるSNSなどで差別的・排他的言動をする人たちは、現実社会では目立たず大人しく。あるいはロンリーウルフ的なテロを起こす存在という見方が一般的かと思います。
そういう視点からすると赤メガネのような人は出てこなそうですが、ぼくは逆に有事になると排他的な人が暴力性を手に入れてしまう怖ろしさを想像してしまいました。
日本の怖い話あるあるは、田舎町でドロドロの殺戮が繰り広げられる展開です。
最近ディズニープラスのドラマにもなった『七夕の国』なんかはその典型ですね。(もちろんフィクションですが)
田舎の共同体の絆の強さが故に、外に情報が漏れないように共同体の人たちが協力して隠匿や工作をやんわりと行ってしまう。
そういう風習があるから、隠された殺人事件がたくさんあるのかも、という想像力を掻き立てられますね。
とは言え、そもそも大正時代の関東大震災の際に、排外的な残念な出来事があったのも事実。
平時ではフレンドリーでも、有事になった際に事が拗れてしまうことは、残念ながら避けられないのかもしれない。
思想を超えて会話してほしい、という監督の想い
本作の監督アレックス・ガーランドはインタビューで以下のように語っています。
私は観客に会話をしてもらいたいのです。ほとんどの映画はすべての問いと答えが物語のなかに含まれているから、なかなか会話につながりません。
私は日本の政治について詳しく把握していないので同じ状況かはわかりませんが、ヨーロッパやアメリカでは右派と左派の会話は完璧に崩壊しています。だから私は、右派と左派の観客が喧嘩をせずに議論できるような、双方に共通点がある映画をつくりたかった。ただ会話をしてくれること、それがこの映画の答えなのです。
サラッと悲しい発言をしていますが、ヨーロッパやアメリカでは我々日本人が想像するより遥かに分断が進んでしまっているようです。
映画の中にも「関わらないようにしている」と、平時そのものと言える日常を過ごしている街が登場しました。
そういう緩衝地帯が、もしかすると日本なのかもしれません。(というか関わらないでおこう考え方が日本人っぽい)
しかし、監督が望んでいるのは会話をすること。
この映画を通じて、ぼくらは思想・信条を超えて他者と会話ができるようになるのか?
本当にあり得ないこと?という切り口から、今回は2つ取り上げてみましたが、こういう些細なことから会話を生めたら良いなと思いました。
ではまた!kei_tenでした。