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【Art&Design】光と影の卒業制作展
2025年1月18日。大学入試の共通テストが行われているこの日、武蔵野美術大学の卒業制作展に行ってきました。
ムサビに来たのは十数年ぶり。自転車で15分という近距離ながら、N字型の門をくぐることは意外となかったものです。
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新しく道路が通って、校舎が増えたりリニューアルして、令和のムサビ生に心なしか嫉妬しております。うらやましい。
とは言え、今年の卒制に挑んだ大学四年生は高校と大学時代にコロナ禍を経験し、在学中にアフターコロナ(ニューノーマル)も経験している逞しい世代です。
多感な時期に相当世の中に振り回される経験をしたはずなので、作品へのアウトプットにも何かしらの影響があるのではないかと、勝手な想像を膨らませながら訪れた次第です。
卒展の定番どころ「12下」「パブリックアート」
見どころ①:本命が多い12号館のB1階展示
やや勝手な定義づけですが、ムサビのランドマークである12号館のB1階(通称「12下」)は優秀な作品が集まりやすいです。
時が流れても変わらず、視覚的にインパクトのある作品や、研究要素とアウトプットのバランスの取れた群に出会えました。(ピックアップした写真は個人的好み)
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見どころ②:ダイナミックで儚さのあるパブリックアート
もはや定番化している「パブリックアート」も見どころのひとつ。
卒展でパブリックアートがなぜ注目なのかというと、大掛かりな作品にも関わらず、展示期間が終わればあっさり壊されてしまうから。
その侘び寂びがまた、日本のアートらしさを表していると考えます。
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ノスタルジーと儚さに思わず惹かれた作品
個人的には最後の方(空デの千葉さん)の作品がMVPでした。
ムサビの校舎はコンクリ打ちっぱなしが多いため、人集りが出来ることで初めて作品が存在感を持つという、憎い演出をされています。
この筒状の空間に入って、土の匂いを感じるというのがテーマとなっており、四半世紀ほど前に流行った、直島のパブリックアートや地中美術館を彷彿とさせる体験型アートにノスタルジーも感じてしまいました。
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個人的好み「工デ」の展示は、自然光を取り入れた演出に。
そして、令和になって校舎も新しくなった醍醐味を感じれたのが、14号館と体育館で展示されている工芸工業デザイン学科のものでした。
見どころ③:体育館展示のテキスタイル
体育館は昔から変わらずテキスタイルコースの作品が展示されているのですが、入り口付近の作品に影を利用した演出があったのが印象に残りました。
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以下の2点も、工芸とアートに振り切らない「ムサビの工デ」らしい作品だと思います。
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見どころ④:14号館の光の演出
そして、新しく出来ていた14号館の展示が個人的に圧巻でした。
その作品数の多さもさることながら、西日が刺すガラス張りの空間で作品を鑑賞するという体験がとても良かったです。
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もちろん、日が当たらないところの作品も良かったですよ。
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展示で感じた3つの要素
光と影の演出
今回の卒展で感じたところは、タイトルにもした「光と影の演出」でしょう。
14号館の作品以外も、写真から伝わるように光と影が印象的だった作品が多かったように感じました。
平成ノスタルジー
また「ノスタルジー」要素のある作品もちらほらと見かけました。
個人的MVPだった土の匂いを感じるパブリックアートだけでなく、平成をテーマにした作品が多かったように思います。
さり気なさ、儚さ
そして「さり気なさ」という要素を感じさせる作品が多かったようにも感じています。
言い方としては「儚さ」も含まれているかもしれません。
注目しないと気づかない要素が盛り込まれていたり、一見作品に見えないものがあったり。
これらの3要素は今回に限らないかもですが、時代性の影響が少なからずあるのかもしれませんね。
時には学生アートに触れる機会を。
今回は機会があってムサビに訪れましたが、久しぶりの卒業制作展を鑑賞して、色々と気付かされるものがありました。
美術館の展覧会は洗練されている一方で、日常からクッキリと切り離されているところがあります。
美大の卒展は、逆に普段学生が過ごすキャンパスが展示空間になるため、日常の片鱗が感じられるんですね。
山口周さんが書いた本が有名ですが、クリエイティブ業界でないビジネスパーソンこそ、美術館だけでなく学生アートに触れてみるのも良いかと思います。
では、また。kei_tenでした。