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乗せてもらえなかったのか、乗る必要がない存在なのか。それが問題だ。

大学サークルの合宿最終日を迎えんとする飲み会、23時。
宴もたけなわとなり沈没者も出だした頃、突然山崎えみりは女帝エミリィ(20)となり立ち上がった。

「今から日付変更までに笑った奴、私山崎えみりが蹴り飛ばすから。」

脈絡もなく傲然と言い放った女帝エミリィ(20)に対して酔っ払いどもはざわめいた。

「えみりの蹴りとか可愛いんじゃ、、、」
えへらへら笑いながら発言した片桐よしおに、一閃。鉄砲玉のヤス並みのヤクザキックが繰り出された。よしお、ダウン!!死なないでよしお!と囃し立てた山口、相川にも二閃、三閃。

「敗者に復活はない」
女帝エミリィヤス(20)は冷たく言い放った。

「しょ、勝者にいいことあんの・・・?」
弱小ブレイバー佐川が恐る恐る尋ねた。
「蹴られない。」
顎をしゃくらせながら、ノータイムで返ってきた答えは端的に絶望。
回答に反応した2、3人がムエタイミドルキックの餌食となった。女、子ども(未成年)にも容赦のないそれは、まさに女帝エミリィヤス・シリポーン(20)の名に恥じぬ暴虐である。

ここまでで、なんだかんだグダグダしつつも23時30分には達していた。一通りキックのくだりが終わった後、場には微妙な静寂がおちた。これから日付変更まで約30分、どのように過ごすべきなのか。誰もがグラス越しに上目づかいで互いの出方を伺っていたそのとき、

「片桐、世にも奇妙な話いっきまーす!」

蹴られていない全員が、『黙れ小僧!!』と凄む山犬の形相になっていることをものともせず、第一被害者片桐よしおは朗らかに、しかして顔は真面目に手をあげた。

「女帝エミリィヤス・シリポーン(20)なんて、このサークルにいた?」

「「誰だよシリポーン」」



よしおは真面目な顔で続ける。
「いや、まじめに。山崎えみりって誰?って話。」

場に天使が通った。通っただけで、誰のことも守ってはくれなかった。お呼びでない?こりゃまた失礼!とニヨニヨしながら去っていっただけの天使。悪魔よしお魔女帝エミリィヤス・シリポーン(20)えみりは真顔で見合っている。耐えきれなかった相川が、メンチ合戦のBGMをどぅるどぅる歌い始めた。山口がベースのリズムをボンボンあわせる。

どぅるるるる どぅるるるる
ぼん ぼん  ぼん ぼん

どぅるるるるっる どぅるるるるぅ
ぼん ぼん ぼん ぼん ぼん ぼん

よしおとえみりは見合っていた目線をぬるりと周囲に巡らせ

「「この人本当は誰かお確かめになることをお勧めしますよ。」」

「お前ら打ち合わせしてたろ!!!!!」
佐川渾身の叫びが奇妙な緊張感を叩き潰した。

誰もが胸を撫で下ろした。突っ込みというのは偉大である、ブレイバー佐川よくやった。お前は本当の勇者だ。やっだもぉ〜どこから仕込んでたのよォ〜。緊張が解け普段の雰囲気に戻る飲み会をにやにやしながら見守る仕掛け人2名。時刻はもうすぐ0時になろうとしていた。

「はい、全員アウト。尻をだせ。」

なお、翌日の帰りのバスに女帝と悪魔は乗っていなかった。まこと奇妙な話である。

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M-1にもう一本、創作で出してみたかったのですが…なかなか難しかったです。
皆さまの作品が本当に面白くそしてどこか生真面目で楽しくて、つい調子にのりました。


書き途中、保育園の休園連絡がきたので真顔を通り越して虚無顔で書いておりました。そこだけは自信があります。







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ふたつお
ここまでお読みいただきありがとうございました。