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身の上話


15年前
涼しい夏の早朝
僕の魂はその日壊れた

15年後
風が強い早春の昼下がり
今も魂に包帯を巻いている

決して短くない歳月
僕の歴史には何かが付き纏う
何かは
傷や闇と軽々しく言えない
ならば誇りなのか?
それも明らかに違う
自我を形成する為の伴侶として
身体の一部に根を張っているのだと思う
白い錠剤を栄養にして
上昇と下降の世界に連れ添われたのだと思う

なあ お前
もしも明日片道切符を手に入れたら
ホームで別れを告げても良いか?

なあ お前
もしも明日更に重篤な病が有ると判明したら
リビングの隅で忘れてしまっても良いか?

なあ お前
有りそうで無い世界を
真面目な顔をして考えても良いか?

緑色の手帳と診断書を
直ぐに燃やす準備は出来ている
それでもお前は
多分
操れない睡眠の後に
ミルクを振る舞ってくれるのだろう
明日は余りにも近い
そうやって15年過ごした

16年後
枯葉舞う晩秋の夕暮れ時
僕は魂を何と呼んでいるのか


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