タイムカレンダー 3


    目を覚まし時計を見ると12時を少し過ぎていた。スマホのアラームのスヌーズごと切ってしまっていたらしい。
   「4時か・・・」と溜息交じりに吐いた。昨日から夢が起き掛けの頭に居座る。銀世界のように辺りは白くさらに霞んでいた。人の気配は無くひとり立ち尽くし、時計塔だけがくっきりと見えた。見覚えがあるようなないような。確かに4時を指していたのは覚えているが午前なのか午後なのかは分からない。

   窓を開けると今日も快晴で昨日のように暑い。二日酔いではないが、寝すぎたせいか体は稍怠く頭が重い。暫しソファに座り放心と戯れた。13時を回り空腹を感じキッチンに立ち卵とベーコンを焼く。お湯を沸かしインスタントの味噌汁を作り、米を温める。昼の情報番組を眺めながら昼食を食べる。
    昼食を済ませると頭が働くようになったが、家に居ると何だか鬱々としそうだったからバイクで出かけることにした。白浜の海にでも行ってみようかと思った。食べ終わった食器をササっと洗い、水で顔を洗い軽く髪だけを梳かして後は着替えるだけにした。ボーダーのTシャツを着てスウェットのショーツを履き外に出ると起きがけに感じたように焼けるほど暑い。途中コンビニでお茶を買い、大通りから小道に入り何度か右左折し、小さな踏切を通ると白浜の海に着く。バイクを道路脇に停めて先ずは砂浜に向かった。
   サラサラとした砂浜に足を取られながら歩き海を少しだけ味わい、舗装された階段に座り込み海の轟きを聴く。若いカップルが波打ち際ではしゃいでいて、小さな子を連れた親子がパラソルの下に座っている。東屋ではタイダイのTシャツを着たりタイパンツを履いた3人組の男たちがジャンベやディジュリドゥで演奏している。ジャンベの小気味よいリズムと、ディジュリドゥのドゥドゥと独特な音色が聞こえてくる。俺もペルー発祥の民族楽器のカホンを持っていて、偶に近所の小さな公園に行き独りで演奏する事があるから少し親近感が湧いた。
   ポケットからスマホを取り出しメモを開きタイムジャックの歌詞作成に取り掛かる。歌詞や詩を書く時はペンは取らず、決まってメモ機能で紡いでいる。潮風が髪を攫い、熱は体内まで届く。気候をただ感じ、メモ画面に集中する。
・・・
タイムジャッカー時間を戻してくれよ
深い眠りから起こしてくれよ
未来が暗闇なら過去へ手紙を書く
タイムジャッカーお前との出会いを待つ

と歌詞を締めた。
    メモを閉じ時計を見ると17時を過ぎていた。若いカップルと親子連れの姿は見えず、東屋に居た男たちは楽器を置いて座り何かを話しているようだった。帰宅しようと思い、足裏に付いた砂を払いバイクに向かった。夕日を目掛けてひた走る。今日は誰からも連絡は来ず、こちらから誰かに連絡することもなかった。歌詞を完成させた事に満足し1日を終えた。

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