あなたの中にある本当の物語をあなたは知らない

あなたの中にある本当の物語をあなたは知らない

　生きているあなたが、どのように形成されて、今があるのかについて、多くの人が気を止めているとは考えにくい。

　自分を知る為には、内面に蓄積されてきたものを無視して語ることは出来ない。実生活が厳しく感じられて、シリアスを受け入れるだけの抗体を持ち合わせていなければ、そのような作業は問答無用に切り捨てるだろう。拒否するどころか、全力で否定するだろう。無理もない。それは精神を平穏に保つための護衛策である。しかし長きにわたって強い葛藤がぬぐえず、解決し難い何かしら問題のようなものが、あなたの内部に長い間居座っているとすれば、いつか決心をして、固く重い扉をあける行動が必要となってくる。それは別のステージへ向かう為に欠かせない通過儀礼となる。

　今生きているあなたの内部にあるもの。閉ざされた箱の中にあるもの。それには頑丈な鍵がかかっている。自分で開けることをずっと拒否してきた箱。しかし、まさかその中にある、忘れ去ろうとしているものが、今のあなたに大きな影響を与えているとは考えもしないだろう。思考や言葉、動作、身動き、身体の使い方すべてに影響を与えている。そればかりか時間の感じ方や、自己存在、感情、記憶、癖、性分、得意や不得意、好きや嫌い、出会いと別れ、幸と不幸、信じる信じない、信念、思想、哲学、あるいは信仰のようなものにまで影響を及ぼしている。

　人間観察が趣味という言葉を聞くことがある。その前に自分を良く知ることがなにより重要である。自分を知ってこそ、他者の存在が欠かせないことを知るのである。