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おじいちゃんと僕【短編小説】
僕は、おじいちゃんに聞いてみた。
「木って生きているの?」
おじいちゃんは言った。
「ああ、もちろん生きているとも」
僕は言った
「でも木って動かないよ」
おじいちゃんは言った。
「そうだなぁ、たしかに木は動いてないように見える。でも木は動いているんだよ。」
僕は言った。
「どこが動いているの?」
おじいちゃんは言った。
「健斗はどこだと思うかい?」
僕は言った。
「葉っぱなら動くね。でも、風が吹かないと動かないよ。」
おじいちゃんは言った。
「そうだとも、おじいちゃんも健斗もあの木と同じで風が吹かないと動けないんだよ。」
僕は言った。
「僕は、風なんか吹かなくても動けるよ。だって風が吹いてない日だって幼稚園にいけるもん。」
おじいちゃんは言った。
「健斗はごはんは自分で作れるかい?」
僕は言った。
「ごはんはお母さんが作ってくれるよ」
おじいちゃんは言った。
「そしたら、健斗の風はお母さんだな。」
「人は、自分だけではどうにも生きていけないんだ。」
僕は言った。
「ほんとうだね。それじゃあ、おじいちゃんの風は何?」
おじいちゃんは言った。
「そうだな。おじいちゃんの風はかわいいかわいい健斗かな。」
「そろそろ家に帰ろうか。」
僕は言った。
「そうだね。今日のご飯はなんだろう?」
夕日の中、2人の長い影が地面を歩いていた。