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父・坂本一亀の内輪話

2023年04月05日記事

坂本龍一の父「一亀」、無骨の人だった

坂本龍一の父は「三島由紀夫」をデビューさせた大編集者

エンタメ・アイドル 投稿日:2018.05.03 11:00 FLASH編集部

 作曲家の坂本龍一が、4月23日放送の『ファミリーヒストリー』(NHK)に出演した。番組では、坂本が「子供のときは、怖くて父の目をちゃんとまともに直視したことはなかった」と振り返る。父・一亀さんは編集者だった。
 弟の坂本昇さんは一亀について「『こんちくしょー』『バカヤロー』。かわいい表現とか、いい表現ができないんですよね。大体、ある一定の線を越えると『バカヤロー』が出てくる」と、いつも怒鳴り散らしていたと振り返る。
 伝説の編集者とまで言われた一亀が特に力を入れたのが、新人作家の発掘だった。彼が三島由紀夫に対して長編小説を書くようアドバイスすると、三島は3日後に大蔵省を辞め、その後『仮面の告白』(河出書房)を発表した。

 坂本は父について「(新人を)世に出しちゃったらそれは人に任せて、自分はもう新しい人を探す。お金にも地位にも興味がなかったので、小説家のかたに『バカヤロー』とかなんだって言うので有名だったみたいです」と明かした。
 さらに、編集者として作家と飲み歩くことが多かった父についてこう続ける。「僕が知っている父っていうのは毎日午前3時ぐらいに帰ってくる。当然寝ているんだけど、大通りを大きな声で歌いながら帰ってくるので、目が覚めちゃう。もうそこら中に聞こえてますよ。

『またか』って感じで」  

 坂本は東京芸大に進学し、その後YMOとしてデビューしている。テクノ音楽に濃厚メイクというスタイルで人気が出た際は、父から「なんで音楽で勝負せんか! 俺はお前をピエロにしようと思って音楽学校に入れたわけじゃない!」と怒鳴られたという。

 一亀は、『ラストエンペラー』(1987年)のアカデミー賞作曲賞受賞パーティでも、坂本を褒めることも笑顔で話しかけることもなかった。

 さらに坂本が琉球音楽を取り入れて作曲した際には、「これはお前の音楽じゃない。なんでこんなものを入れるんだ」と指摘。ムッとした坂本と口論となり、初めて大喧嘩になったという。

 周囲に対して、息子の話や自慢を一切しなかった一亀は、2002年に80歳で亡くなっている。「お別れの会」で配った手作りの冊子の中で、坂本はこう綴っている。

「父とまともに話をしたことがないのが悔やまれる。創作に携わるものの大先輩として、聞いておきたいことが山ほどあったのだが。父は自分の思いを他人に伝えるのがへたな人だった。愛するのも愛されるのもへたな人だった。最後までそういう人だった」

 ちなみに、一亀が勤務していた出版社から見つかった日記には、「男児生まれる! 標準を突破した偉大な赤ん坊なのだ!」と記されたメモが。
 坂本が出演したテレビや雑誌をすべてチェックしていたことなどが判明した。
 番組では親子関係を「全然向き合えない。不器用」と表現した坂本。決して言葉に出さずとも、世界で活躍する息子を、父は誰よりも誇りに思っていたに違いない。

坂本龍一氏の大好評連載「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」、『新潮』2月号の第8回「未来に遺すもの」で遂に完結!
闘病中の創作活動のほか、ウクライナ戦争への考えやBTS・SUGAとの交流も
株式会社新潮社 2023年1月6日 13時00分 
 世界的音楽家・坂本龍一氏による自伝「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」。現在ガンのステージ4にあるという病状を赤裸々に明かし、初回の掲載誌が発売即重版されるほど反響のあったこの連載が、1月7日発売の「新潮」2023年2月号で遂に完結を迎えます。 
 過去最長、約2万5000字の大ボリュームで語られるエピソードは、余命宣告を受けた直後のピアノ・ソロ生配信から、中国での大規模インスタレーション、オランダでの舞台芸術、ウクライナのヴァイオリニストとの共作曲、哲学者・柄谷行人氏の著作に示唆を受けた団体の活動など盛りだくさん。若い世代に常に影響を与えてきた教授らしく、経済思想家の斎藤幸平氏やBTSのSUGAら、第一線で活躍する才能たちとの交流も明かされます。

 また、昨年末に配信され全世界で6万人以上が視聴した「Playing the Piano 2022」と、1月17日に発売される新アルバム「12」に関しては、プロモーションでの本人稼働ができないことから、この連載最終回が坂本氏の最新の思考に触れることのできる貴重な機会に。自らの死を見つめ、「未来に遺すもの」とは何なのか――音楽と共に、ぜひその言葉にも耳を傾けてみてください。
■坂本龍一氏コメント
 2020年の末、自らに残された時間を悟ったぼくは、生きているうちにしておかなくてはいけないことをリストアップしました。そのひとつが、『音楽は自由にする』(2009年)以降の活動を自分の言葉でまとめておくことでした。少々慌ただしいスケジュールだったけれど、聞き手の鈴木正文さんにも助けられながら、間もなくリリースされる『12』までの足跡を振り返ることができ、今はホッとしています。連載は完結しますが、もちろんこの先も命が続く限り、新たな音楽を作り続けていくつもりです。

■著者紹介 坂本龍一(さかもと・りゅういち)
 1952年東京生まれ。3歳からピアノを、10歳から作曲を学ぶ。東京芸術大学大学院修士課程修了。1978年『千のナイフ』でソロデビュー。同年、細野晴臣、高橋幸宏と「YMO」を結成、1983年に散開。出演し音楽を手がけた映画『戦場のメリークリスマス』(1983年)で英国アカデミー賞音楽賞を、『ラストエンペラー』(1987年)でアカデミー賞作曲賞、ゴールデングローブ賞最優秀作曲賞、グラミー賞映画・テレビ音楽賞を受賞。その他、受賞多数。1999年制作のオペラ『LIFE』以降、環境・平和活動に関わることも多く、論考集『非戦』の監修、森づくりを推進する「more trees」の設立など、活動は多岐にわたっている。2006年には、「音楽の共有地」創出を目指す新しい音楽レーベル「commmons」を立ち上げた。2009年、初の自伝『音楽は自由にする』を刊行。2023年、前作『async』以来、約6年ぶりのオリジナルアルバム『12』をリリース。
PR TIMES


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