映画「そばかす」は、「ふつうの恋愛」がままならない私たちにやさしい
2022年11月の終わり。
ちょうど自分の恋愛指向や性的指向に悩んで、いろいろ調べていた頃。
もうすぐ上映されるこの映画を知った。
YouTubeの本編映像を観て、直感的に「今の私に必要な映画だ」と感じた。
私が本編映像で観たのは、お見合いのシーン。
冒頭30秒ちょっとに、心臓がキュッと縮むあの空気感が詰まっている。
ここに共感できる人は、きっとみんな仲間だと思う。
この映像からして、かなり自分の内面の脆い部分にクローズアップして描かれそう予感がする。
「自分の中で新しい何かが生まれるのではないか」という期待半分、「傷つけられたり立ち直れなくなったりしたらどうしよう」という怖さ半分で、劇場に向かった。
上映回はクリスマスの朝8時から。人はまばらだった。
すごく良かった。出だしから、すぐに「これは私の話だ」と思えた。
主人公の蘇畑佳純さん。
彼女が日頃直面する、ちょっとした気持ちのモヤモヤや周囲とのズレは、私にとっても心当たりがあるものばかりだった。
あまりに自分ごとのように共感できてしまうので、逆に自分と彼女との差分を考えたほうが発見があるように感じて、観賞中はひとつひとつ注意深く違いを探しながら、「私ならどうするだろう?」と真剣に考えていた。
こんなに集中して、一生懸命展開を追って映画を観たのは初めてのことだった。
ぜひ実際に本編を観て、胸に浮かぶ感情の波を大事にしてもらいたい。
なので、ここでは詳しい内容は紹介しない。
けれど、ひとつ参考に、私が特に印象に残ったシーンを紹介する。
物語が始まる、冒頭のシーンだ。
この場面で早々に、私が抱えていた「怖さ半分」が払拭された。
自己投影しすぎてほぼ愚痴、しかも本筋とは関係のない部分だけど。
ネタバレなしで視聴したい方は、この先を読まないでください。
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居酒屋、男女4人、飲みの席。
「皆の好きなタイプは~?」の話題になる。ありがち~~!
そもそも「好きなタイプ」とかいう言葉がよくわからない。何それ?
仮にタイプがあったとしても、初対面、しかも軽そうな相手に、酒の肴にされるような話題では、絶対にない。
そう思ってしまう。こういうところだよね!わかってるんだよ!!
佳純さん、わかるよ。私もあなただったら、同じように上手く話に乗れず、食事をつつくばかりになると思う。
好きな映画の話でつい勢いづくと、急に場が盛り下がるのも、
「……○○さんって、謎だよね(笑)」と言われるのも、
(この台詞の解像度高すぎて震えた。こういうヤツこういう言い方するんだよなぁ~?!!謎ってなんなんだよなぁ~?!!!)
間が持たなくて手持ちぶさたに飲み物に口をつけるのにも、共感しかない。
このシーンだけで、
「ああ、この映画は私にやさしいな」「安心して観れるな」と確信した。
観にきてよかったと思った。
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本筋で描かれる佳純さんの心の揺れ動きは、細部に至るまで、もっとずっと丁寧で、涙が出るくらい繊細だ。
世界のふとした瞬間に息苦しさを感じる、私の仲間へ。
おまもりのように優しい心強さをくれるこの映画を、ぜひ観てほしい。
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