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女性活躍推進が進まない理由

企業における女性登用率30%達成を10年先送りするという政府方針がでた。現在は15%で、今までの取り組みの成果が上がっていないということだが、現場レベルでは、未だ“女性を取り立てて登用することが咀嚼できない”こともあるそうだ。

当然ながら、明らかな差別があってはならない。加えて育児期間における勤務形態への配慮など、女性特有の問題に対する配慮は必要だろうが、今や育児は女性だけの問題ではない。また管理職に対する本人の意思もあるなか、特段女性を取り上げることに必然が見出せない企業があるのも理解できる。

女性活躍推進に限らず、障がい者の法定雇用率、LGBTsフレンドリーなど、各々の属性に対する理解啓発の動きが広がっている。とても好ましいことだが、ステレオタイプな配慮の方法論に陥り、当事者意識が育まれるかどうかが懸念される。加えて、そもそも女性であっても人ぞれぞれである。障がい者、LGBTsに対しても同様である。属性というカテゴリーで議論を進めることには、きっと限界があるはずなのだ。

「属性」ではなく「個性」で捉える

今や育児、介護など細切れの時間をやりくりしての働き方は、男性、女性に限らず多くの人々の課題である。加えて、副業など会社とは別に自己実現を図る働き方、地方や海外で暮らしながらのリモートワークなど、多種多様な働き方が広がっている。

こうした状況下において、社員を典型的な属性で捉えるのでなく、下記のように誰にでも当てはまる個性のマトリックスで捉えてはどうだろうか。

身体的な個性(性別、年齢、障がいの種別、性自認、性的指向)
文化の個性(人種、宗教、民族)
働き方の個性(リモートワーク、育児休業、介護休業)
価値観の個性(副業、兼業、プロジェクト契約)

例えば、性別、年齢、障がいの種別、性自認、性的指向などは「身体的な個性」と捉えてみる。こうすると、男性、女性という二者択一ではなく、LGBTsも無理なく一つの個性として認識しうるはずだ。そもそもLGBTsという呼称も、あるカテゴライズに終始してしまっているという指摘もある。今や、世界はSOGIという捉え方がトレンドである。

「SOGI」は、セクシュアルオリエンテーションとジェンダーアイデンティティ(Sexual Orientation and Gender Identity)の頭文字をとった略語で、「性的指向と性自認」のことを指します。「ソジ」または「ソギ」と読むのが一般的です。性的指向とは、好きになる相手の性のこと。性自認とは自分で認識している性のことです。これまで性的マイノリティーを表す「LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)」という呼称が広く認知されていましたが、SOGIはLGBTも含めた全ての人の性的指向と性自認を表す総称です。(出典元:日本の人事部)

文化の違いも、一つの個性だろう。会社によっては地元住民しか社員がいないケースもあるだろう。その会社にとって必要なダイバーシティは、ひょっとしたら性別ではなく、他地域からの採用かもしれない。

育児世代、介護世代にとってリモートワークは恩恵のはずである。リモートワークの働き方の一つとして、育児、介護を捉えれば、形見の狭い思いをすることなく働きやすい環境になるはずだ。

社員の会社に対する価値観も一つの個性として捉えてはどうだろう。組織の規模が大きくなればなるほど、会社に対する帰属意識も多様になる。創始者の理念に共感するのもあるが、その会社が生み出す商品やサービスが好きだからなど、会社と社員との接続点もさまざまだ。また”会社のため”というより、自分のプライベートを充実させつつ、生活費を稼ぐという意識の社員もいるだろう。こうしたグラデーションを意識することで、より実際的な人事戦略がとれるのではないだろうか。

このように捉えれば、社員全員が必ず何かしらの個性マトリックスに包含され、ダイバーシティ&インクルージョン経営の取り組みが社員全員にとって自分事になるはずだ。

さらに、この個性マトリックスも会社ごとで設定してはどうだろう。その会社における経営戦略に沿って、どんな多様性が必要なのかを設定し、それに沿って社員の個性を理解する。これによって経営アジェンダとしての人事戦略、ダイバーシティ&インクルージョン経営が可能となるのではないだろうか?

女性活躍推進は、ステップ論としては理解できる。ただダイバーシティ&インクルージョン経営による企業価値向上を目指すのであれば、多様性の本質は念頭におきたいものである。

*「属性を個性で捉える」に向けた意識醸成を進める当社の研修も参考にしていただけると嬉しい。

*トップ画像に掲載しているのは 障がいのある人とデザイン学生によるプロジェクト「シブヤフォント」の「ネオンシティ/マルチカラー」というパターンです。データの売上の一部が障がい者支援施設に還元されます。ポストカード、チラシの柄などにご活用ください。


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