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今だけかもしれない気持ち

数日前の夜、彼とカフェで話していた時。
その日は前日二人の間に起こったいざこざについて話し合っていた。

その話の延長で、こんなやりとりをした。

「私、HSPなんだよ。HSPって知ってる?」

「いや、聞いたことない。」

そうだよね、彼自身にその要素がほとんど無いし。周囲にもそういう人がいないとしたら、まず関わることがないワードだよね。

「繊細さんとかって言われるんだけどね、物事を深く考えちゃったりするんだよ。」

「そういうこと、もっと先に聞きたかったな。」

「言わなくても分かってくれてると勝手に思ってた。共感はしなくて良いから認知だけしてほしいんだよね。」

もう少しHSPについて話そうと思った矢先、閉店の時間を知らせに店員さんが現れた。

「まぁ、気が向いたら軽く調べてみて。」

その時は心がギスギスしていたから、多分調べることは無いんだろうけど、と冷淡な気持ちを込めて、捨て台詞のように彼に言い放った。



後日、新宿で彼と合流した日。

この間の地獄のような雰囲気は一切無く、むしろ二人とも久しぶりに昼から会えたことに浮かれていた。

そんな時に先日の話を掘り返して、また険悪になるのを恐れていたのだが、どうしてもHSPについて知ってほしかった私は、特徴がまとめられたサイトを彼に見せた。

「これ読んでほしい。まんま私だから!」

「あ、あの後ちょっと調べたよ。」

「調べてくれたの?!さすがじゃん…」

嘘だったとしても良いと思えるくらい嬉しかった。(彼はその場で嘘をつくような人では無いが。)

続けてHSPの人に対して言ってはいけない言葉が書かれたページも読んでもらった。

「(記事を読んで)たしかに、これ、いたちゃんだわ。これからは気をつけるね。」

何を具体的に気をつけてくれるのか気になったが、掘り下げるのはやめた。

今はここまで受け止めてくれたことに感謝したいし、どうせ分かってもらえないと匙を投げていた申し訳なさもあった。

またぶつかったらその時はきちんと向き合おう。


最近は、丁寧に会話をすると私が喜ぶと分かったようで、テレビやケータイを使うことなく、向き合って話す時間を作ってくれている。

好きって何だと思う?理想の家族の形は?など、これまで言語化を求められなかった彼からしたら面倒であろう話題にも嫌な顔ひとつせず付き合ってくれる。
いたちゃんはどうなの?と聞き返してくれるのも純粋に嬉しい。

まだまだ普段親友としているような深い対話とまではいかないけれど。

私も彼が思考よりも感覚を重視している人間であることをわかっているから、そこまでは求めないようにしている。

むしろ、深く考えすぎずにその時その瞬間を楽しめる彼に助けられている部分がたくさんあって、今に集中する感覚を鍛えてもらっている実感がある。

彼も彼で、私がどうしてこんなに将来に対して不安を抱えているのか分からないだろうし、思考が過去と未来に飛んでいることも理解し難いと思う。

深く考えた先に幸せが確約されているわけでは無いし、たとえどんなに満たされた状態でも、完全に不安がなくなるわけがないこともわかっている。

じゃあ私は彼に何を求めるのだろう?

この人生に対する虚無感・不足感は自分自身で向き合って埋めていくしか無い。人に助けてもらうことがあっても、丸投げしてはいけない。
完全には塞がらないのは分かっているけれど、それでも落ちないように日々こつこつと向き合うしか無いのだ。
これは彼の問題では無くて私の問題。

こうして奔走している私をバカにしたり否定することなく、ただただ見ていてほしい。
そして疲れ果てて戻ってきた時にニコニコ迎え入れてくれたらそれでいいや。

反対に私がやるべきことは、彼がやってくれたことに対して感謝したり喜んだりすることや、彼が成し遂げた功績を承認することで、確固たる自信を持たせてあげることだと思う。
それ以外に私に大した仕事は無い。


今はまだお互い若いうえ、付き合っている年月が浅いから、この時期特有の熱量がある。
これが消えて、いわゆる現実を見なければならないフェーズに入った時にどんな二人になっているだろうか。


「私たちは一緒にいた方が良いと思うよ」


これは折に触れて私が彼に言っている言葉。
遠距離が始まることに対する不安からなのか、本当に生活を共にしていきたい気持ちからなのか、正直曖昧ではある。

この答えがこれから先わかってくるんだと思う。

これまでの私なら不安で仕方がなかったと思うが、今は違う。
長期的な付き合いを前提にした話をしてくれたり、愛情表現を怠らない彼のことを信頼している。
あとはもうなるようにしかならないので、その時々で素直に気持ちを伝え合って、ビジョンを共有し続ける努力をするのみ。


数ヶ月後には状況が急変しているかもしれないけれど、それも楽しんでいこうね。

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