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だるまさんが、

だるまさんが、と言われたら、「ころんだ!」って返します。まちがいない。
だって、小学生の頃よく遊んでたので。


赤ちゃんのいる友人がそこそこいる私。
いつかの手紙で、今はこんな本を子どもに読んでいるよ、と書かれていた。

赤ちゃん向けの本なんて、赤子がいなければ読まない。

でも、私、興味持っちゃうんだな。
対象年齢って、その年齢向けに作られているから大人が楽しめるわけではない、というのはもちろん念頭にある。
ただ、どういうお話なのかな、どういう表現なのかな、そういうのがとても気になる。
純粋な好奇心。
読んで楽しいって思えたら、とても運がいいことだろうなと思っている。
なにせ、対象年齢が違うんだから。

興味を持ったとはいえ、すぐに読もうとは思わなかった。
いつか読んだら面白そう、くらいで、ふんわり記憶にとどめておいたのだ。

つい先日、何度か図書館で本を予約することが増えた。
不意にそうだ、と思い出して、友人が教えてくれた本を予約してみた。

いい年した子持ちですらない私が、赤ちゃん向けの本を図書館で借りてしまったのだ。


『だるまさんが』(かがくいひろし・さく)

図書館のホームページで所蔵検索した時点でそこそこ冊数があり、貸出もけっこうされている様子。
人気があって、と友人の手紙に書いてあったことを思い出し、検索画面を見てなるほどと思わずうなずいてしまう。

対象年齢がいくつ、というのを把握していなかったので、読み聞かせられるほどの大きい本なのかな?と勝手に思っていた。
図書館で受け取ったときにびっくりする。
思ったより小ぶりな本。
もしや、のんたんシリーズと同じくらいのサイズなのでは……?

赤いだるまさんが、表紙を飾っている。
赤ちゃんは赤い色がはっきり見えるらしい、と赤ちゃんのいる友人たちに聞いた。
なるほど、だるまは確かに赤いしな……まじまじと表紙を眺める。

小さい両手両足があるのも、なかなかかわいい。
というか、目がまんまる。眉尻がやたら下がっている。
ふむふむ、だるまさんの頬はショッキングピンクみたいな色かぁ……。
愛らしい、って言っていいのかな。たぶん。
足がなければ本来地面に接するであろう丸み帯びた部分をじっと見つめていると、りんごとかいちごとか、美術のスケッチの宿題を思い出してしまう。影というか、つやの入れ方が。なんとなく。

(ここより下は内容に触れます。初めて読むならネタバレを知りたくない、自分で読みたい、という方は、これより下をお読みにならないようお願いいたします)


まず表紙を開くと、目を閉じて腕を組む、足をちょんと曲げている姿のだるまさん。座禅っぽい?足が短いからちょっと体勢としてはなんと表現していいものか悩む。

ページをめくる。

そこには「だ る ま さ ん が」と見開きページ。
見える見える、動いているように見えるだるまさんが。
左右に揺れているんだろうか。左のときと右のときで、たぶん絵が一緒かな。
だ、る、ま、さ、ん、が、に合わせて左右に動く。いい感じ。

さて、次のページをめくったら、きっと転ぶんだよな、このだるまさんが転ぶんだよな……と想像する。
少し落ち着いてから、次のページをひらり。

「どてっ」

えっ

転んだ! 転んだけど、確かに転んだ! けれど、そうじゃないのか!
なるほど!!!!

このあとも何度か「だ る ま さ ん が」と左右に動く動く。
えっちらおっちらなのか、とたとたなのか、はたまたどすどすなのか。
だるまさんがどんな風に、どんな速さで、どんな重みを持って動いているのかは読んでいる私たちにはわからない。

けれど、次のページをめくった瞬間「ころんだ!」が脳裏に描かれる私にとっては、転んだ!以外の動きに驚かされてしまうのだ!

いいな、これ。子どもさんならわくわくしちゃうよな。
二つめの「だ る ま さ ん が」の結果を見た私はわかりもしないくせに、そんなことを考えた。(決めつけるのも早いのであった)

おそらく、だるまさんがそんな形状をするわけがなかろう、と思ってしまうと、この絵本は途端につまらないものと化してしまうのだと思う。
ぷしゅー、とか、びろーん、とか。
音?に合わせて、どんなかたちになっていくのか、こんなふうにも言うんだよ~って教えてくれてるように私は感じられた。
姿が一瞬見えなくなっただるまさんが、ページをめくると、おやまあ!違うかたちに!!!!
変身するとびっくりするのは大人もだけれど、まさかそんな音がしたらそうなるのは当然じゃないか、っていう当たり前がない子どもたちなら。
きっと、すごくすごく驚いて、すごくすごく楽しがるんだろうなって思う。そんなことを、私は想像した。


ちなみにだるまさんの表情も毎回違って、じわじわと笑いがこみあげてきてしまう。
だるまさん、おぬし、驚かせるのを楽しがってるだろう?って思ってしまう。


とても短くて、赤ちゃんに読み聞かせるにはちょうどいい長さなのかも。
絵本ナビのみんなの声にある「何歳のお子さんに読んだ?」というアンケート結果を見ると、0~1歳児がダントツに多くて(100人越えてた)。
そのあと緩やかに人数が減っていく。(きっとホームページに来た人で、面倒がらずにアンケートに答えた人が書いてってくれてるんだろうな)
大人19人っていう結果には思わず声を上げて笑ってしまったけれど。

むかし読んでもらった本の中でいうなら、この『だるまさんが』は、『いないないばあ』にすごく近いものを感じる。
小さい子って、「いないない……」って顔を隠して、ぱっと顔を見せながら「ばぁっ!」って言うと喜ぶ。
この、だるまさんが、どてっ、から始まるものも、それに近い。
いたものが急に消えて、次に違う状態になっていること、そのことを子どもは驚き、不思議に思いつつも楽しみ、そして喜ぶのじゃなかろうか。
あくまでも私の想像にすぎないけれど。

きっと、ページを何度もめくり、もどしをするんじゃないかなって気がするのだ。
なぜなら大人の私ですらそうだ。(赤ちゃんですらないのにこの自信である)


『だるまさんが』はシリーズになっていて、ほか二冊がブロンズ新社から刊行されているらしい。
・『だるまさんの』
・『だるまさんと』


すてきな本に出会えてしまって、私はほこほこと胸の辺りがあったかい。

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参考サイト(最終閲覧日は2020/10/22)

・絵本ナビ だるまさんがhttps://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=17129
・絵本ナビ「だるまさん」シリーズが大人気!かがくいひろしさんにインタビューしました。」 https://www.ehonnavi.net/specialcontents/contents.asp?id=97
・だるまさん10周年特設サイトhttp://darumasan.bronze.co.jp/

特設サイトでは、絵本ナビ以外での作者インタビューがあるようです。
リンクがありましたが、私は読んでいないのでここにはリンクしていません。あしからず。

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にわたつみ
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