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百人一首というと

 百人一首に初めて触れたのは、中学生の頃だったと思う。
 授業で、好きな一首を選んで紙に絵と一緒に書き、暗記しなさいということだったように思う。そして経緯はすっかり忘れたが、百人一首大会なるものも開かれた記憶がある。
 ところが、だ。百人一首全部を覚えさせられた記憶は特にない。かるた大会があるから、取り急ぎ覚えるしかない!みたいな感じだった。
 つい先日中学時代の友人と話してみたところ、「百人一首大会を開くと言ったくせに、やつらは百人一首の歌一覧を用意しなかった」と先生に悪態をついていた。そうだったろうか……その辺り、全く覚えがなかった。

 次に百人一首に触れたのは高校の授業だった。おそらく歌を一首一首丁寧に学んだわけではないし、授業でそんなに時間が割かれたはずもないと思う。けれども、百人一首の歌はふわっと覚えている。
 たぶん、国語の成績はそこまで悪くなかったので、授業中に退屈だったり眠気が襲い来たりしたのを紛らわせるために教科書や国語便覧の別のページをこっそり開いていたのだろうなと思う。

 成人してだいぶ経つ。今では百人一首を題材にした漫画もあるそうだが、なんとなく読まないまま来てしまった。
 百人一首を調べるとなると、インターネットでいいじゃん?と言われそうだが、私が愛用しているのは高校時代に使っていた国語便覧。だれが書いたとも知れぬものより、出版社を通して発行された書籍のがやっぱり信頼度高いのだ……。これ、なんと本体価格838円(※私が高校生の時の金額です)。おそろしい。400ページ越えで一部除けばほぼフルカラー、各時代ごとの文学の歴史解説、和歌や俳句の元となった地図と写真、人物や書籍の解説なども入ってこのお値段。下手な新書買うより安い上、この中身の充実度よ……。高校生、とてもいいものを買ってもらってたんだね……。文学だけじゃなく、新書や書籍の案内までされているので、卒業したあとでもいくらでも使える代物だ。
 最近、百人一首だけでなく和歌に興味が出て来たので本当に重宝している。もともと国語も歴史も好きな科目だっただけに、国語便覧をとっておいたのは偶然でもなんでもないのだけど。捨てずにおいてよかった……と思わず噛み締めてしまった。

 ちなみに中学のときに下の一首を書いて覚えた。

いにしへの 奈良の都の 八重桜 今日九重に 匂ひぬるかな
                          伊勢大輔

 この歌を選んだ理由は、小学校にあった紫式部の人物漫画を読んだときに印象的なエピソードと共に載っていたからだ。記憶が正しければ、紫式部がお役目を伊勢大輔に譲るかして、天皇から八重桜を題材に詠むようにとのことで、伊勢大輔が歌を詠んでみせる……そんなシーンだった。
 漫画で見たときに覚えたからあえて覚え直す必要がなかったともいえるし、やっぱりきれいだなと思ったからというのもあったのだと思う。古文が抜きんでて得意というわけでもなかったので、余計に。あとは、絵も描くように先生に言われたから、なんとか描けそうな風景のものが選びたかったんだと思う。

 いま、もし、百人一首のうちで一首覚えて、絵とともに描き添えるように言われたら何を選ぶだろうか。

 もしも家に国語便覧があるようなら、ぱらりとめくってみてはどうでしょうか。高校の時と違って、もしかしたら新たな興味でもって、楽しめるかもしれない。

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にわたつみ
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