物流へのドローン活用状況について
はじめに
もともと軍事目的で開発されたと言われているドローンですが、最近では非常に一般的になってきたと思います。(残念ながら当初の開発目的通り、軍事利用されているケースをよく耳にするのは非常に残念なことですが)
ドローンが一般的に身近に感じられるようになったのは、エンターテイメントのために使われるようになってからではないでしょうか。ドローンを使うことで、気軽に絶景を空撮できたり、ドローンによるショーも最近では行われています。またドローンを飛ばすこと自体の技能を競うドローンレースも行われています。
そんなドローンですが、物を運ぶ目的でも使用することが期待されています。ドローンを使うメリットとしては、道がなくても目的地まで行くことが出来る、最短距離で目的地に行くことができる、無人で目的地まで飛ぶことが出来る(空には歩行者や車がいないので自動運転化がしやすい)、ということがあります。
一方でデメリットとしては、万が一ドローンが(鳥と衝突・ドローン自体の故障等によって)落下した場合に地上で起こる事故のリスク、運ぶ物のサイズと重量に制約があることです。
メリット・デメリットはあるものの、物流を支えるひとつの手段として実用化が期待されています。
ドローンのタイプ
ドローンには回転翼タイプと固定翼タイプの2種類があります。それぞれに強みと弱みがあります。使用条件にあわせて適切なドローンを選択することが必要です。
回転翼タイプ
回転翼タイプはドローンと言われると一般的に思い浮かべられることの多い、プロペラを持ったタイプのドローンです。
このドローンの特徴としては、ヘリコプターと同様に、その場から浮上することができるので特別な滑走路は必要ありません。ドローン以外への投資・運営コストが抑えられるむ点でメリットがあります。
また空中で停止することもできます。この機能を使えば、例えば目的地まで飛行して、その場で停止し、受取人を呼び出し。受取人がドローンを目視したら、着陸を指示すれば運んだ荷物が盗難にあうことも防げます。
固定翼タイプ
固定翼タイプは飛行機に似た特徴を持つドローンです。
固定翼タイプは飛行機と同様に、離着陸に滑走路が必要です。この点で、滑走路を確保できるかが固定翼タイプ導入のカギになります。
滑走路が必要な点で導入のハードルは高い物の、積載量や飛行距離といった点では回転翼タイプより優れており、物を運ぶ性能としては固定翼タイプに軍配があがります。
ドローンを使い解決したい問題
ドローンを使うとどのような問題を解決することが出来るのかを考えてみましょう。
都市部における労働力不足対応
オンラインで注文された小口の荷物が増えており、個人の家にお届けする物流にかかる負荷が高くなっています。この部分を回転翼タイプのドローンが運ぶことで都市部での労働力不足を解消できるかもしれません。また小口宅配がどんどんドローンに置き換わっていけば、もしかすると都市部の道路で日々起こっている渋滞も減るかもしれません。
物流困難地域への生活必需品の安定供給
山間部や離島など、生活に必要なものが限られたタイミングでしか配達されない地域があります。またそういった場所へ届けるためには、高い費用がかかってしまうことが良くあります。そういった地域に、都市部で調達した日用品を固定翼タイプで送ることが出来れば、生活必需品を安定的に供給することが出来るようになります。
災害時
災害時にはいろいろな面でドローンの活躍が期待されます。緊急で輸送が必要な医療器具や輸血用血液などを、道がどんな状況になっていても飛行することが出来るドローンなら、短時間で届けることが出来ます。また飛行しながら、被災地の状況を空撮することで被災地の最新状況把握も同時にすることが出来ます。
既にドローンが実用されている例
アメリカのZIplineという会社が2016年からルワンダでドローンを使った血液や医療品の緊急輸送を行っています。
使われているドローンのタイプは固定翼タイプで、離陸は発射台から押し出される形で勢いよく飛びだちます。お届け先では、着陸しません。商品の入った箱をドローンから地上へ向かって落とします。商品の入った箱にはパラシュートが取り付けられているので、中に入っている血液や医療品にダメージを与えることなく地上に届くようになっています。その後、血液を届け終えたドローンは、向きを変えて出発した地点に戻ります。そこでの着陸方法は非常にユニークですので、ぜひ動画を見てください。Ziplineのドローンは着陸ポイントに張られたケーブルに、ドローン尾翼につけられている小さなフックをひっかけることで着陸します。非常に高い精度でコントロールされているからこそできる着陸方法ではないでしょうか。
まとめ
届けるもの、届ける先、届けるときの状況にあわせて、適切なタイプのドローンを投入することで、様々な物流に関係する社会課題を解決することが出来ます。
都市部におけるドローンの実用には、落下しないドローン・落下しても地上への影響を最小化する機能をもつドローンの開発が不可欠です。ここが解決され小口輸送にドローンが活用されるようになれば、都市の様子は大きく変わるでしょう。信頼性の高いドローン、万が一の時にも人をケガさせない・建物などを壊さない安全装置を持つドローンの登場が待ち遠しいです。
一方で過疎地や離島などへはルワンダで実用化されているZIplineの仕組みを取り入れることで、現在それらの地域で起こっている様々な問題を解消できるのではないでしょうか。
実際に豊田通商が100%出資する「そらいいな」社は九州五島列島において、Zipline社のドローンシステムを使い医療品輸送の事業を開始されようとしています。まだ事前に飛行ルート時間をアナウンスする形での飛行にとどまっていますが、早い段階で緊急輸送に活用できるように関係者の皆様が取り組まれていることだと思います。