毒と蟲喰-家庭崩壊から虐待まで-#2
前回までのこと、好きな人ができたと私に伝える母親。そのことがまったく理解できなかったのだ。「母親は父親のことが好きで、父親は母親のことが好き」ということが絶対でそれが普通だと思っていた私は困り果ててしまったしすごく悩んだ。
こんなこと、友人や同級生に伝えてもわからないだろうし母親が不倫をしているなんて露呈したら恥ずかしいと感じていたのだ。実際そんなことを子供に打ち明けるなんてバカだとは思うけど
そこで私が相談相手として選んだのが、叔母である。叔母は私から見て母親の妹であり、私が幼いときから母親の代わりみたいな存在で、一緒に遊んでくれたり遊園地に連れて行ったりとアクティブで面倒見がいいし私にとっては最高の友達みたいな人だった。私は叔母が家にいる時間帯に訪ねてさっそく相談をした。
なお、実際のやりとりは方言が混じっているが読みやすさのため標準語に置き換えてかつ本名をぼかすため便宜上ここでは「つばき棚」という名前で置き換えておく。
「あのさあ、相談があるんだけどね。相談というか、どうしていいかわからないことがあるんだ。」
「珍しいね、どうしたの?なんか悩んでるの?」
普段は明るくアホの子として振る舞っていたからびっくりしていたのを覚えている。
「お母さんがさぁ、昨日?夜中に私が勉強してるときにさあ…その…打ち明けてきたことがあるんだよね」
「姉ちゃんが?」
「うん…その……好きな人ができたって…」
「え?…はあ?」
これにはさすがの叔母も大きな声で困惑した。
「たぶんだけどさあ、これって不倫だよね…?このままだとさあ…家族がバラバラになっちゃうんじゃないかと思うと辛くて……どうすればいいの?」
その先のことを考えると耐えられなくなり泣きじゃくりながら言葉を振り絞った。
「……っ、つばきちゃんが泣くことじゃないよ、ただこの先のことを心配してるんだよね?つばきちゃんは何も悪くないよ、姉ちゃんは他になんて言ったの?」
「いや、なにも…ただそれだけしか言わなかったからわかんない…」
「そっか…でもねもう泣かないでいいよ、大丈夫だから。姉ちゃんも何考えんだよホントに…子どもに変なこと言って泣かせるなんて最低だよ。ふざけてるわ…!最近夜中に出かけてるなあとは思ってたけど、よその男に会いに行ってるなんてどういうことよ」
ここまでハッキリと言ってくれた叔母にはとても感謝している。でも私の前では見せてないだけできっと彼女も動揺していたとは思っている。
「姉ちゃんの車にバレないようについていって、どういうやつなのか見てから調べるから。いくら(私から見て)お父さんが好きじゃないからってやっていいことと悪いこともわからないなんておかしいよ」
こうして叔母による尾行と彼女の広いネットワークによる調査が始まった。