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鈴を持つ者たちの音色  第五十六話 ”べリューの奪還③”

キックス兄弟と”GI”が率いる”ゼファー隊”は”べリュー”のてっぺんまで、の距離をあと3割ほどの距離に縮めていた。

体力の消耗が激しい。
砂嵐がひどい。
なぜ急に風が巻き起こるのか不思議だったが、すぐにそれが分かる。

”アイツラ”の仕業だった。

中年海賊ダッシュ:「メガネが無かったら全く前が見えなかったな。ん?」

”ゼファー隊員”のひとりが突然服を脱ぎはじめた。
「?」

中年海賊ダッシュ:「おいっ?お前どうした?」

隊員:「暑い、暑い、暑い!」

若海賊シン:「気でも狂ったか?全然暑くないのに!」

もうひとりの隊員も同じく服を脱ぎはじめた‥

ふたり目の隊員:「暑い、暑い‥暑い!水‥みず!をくれ」

水筒に入った水を与える‥「ぶふぁっ!」とすぐに吹き出す。 
水が飲みたいぐらい喉はカラカラなのに、飲むだら飲んだで、すぐに吐き出してしまう。なんなんだ?これは!

「暑い‥身体が暑いっ!」と終いには、我慢できずに地べたを転がりはじめた。

ひとり、ふたり‥さんにん‥、とその数はてっぺんに向かい、てっぺんに近づくほどに”暑がる”隊員は増えた。

どうなってる?!

副隊長シンが何かに気づく。

副隊長シン:「砂?あれは本当に砂か?
砂の舞い方がおかしいぞ!皆の者!砂を吸い込むな!口元を覆え!」

”ゼファー隊”は口元を布で覆った。
”GI”とキックス兄弟も同じくする。

”GI”:「なるほど!副隊長の言う通りだ。よく見ろこの砂を。
感覚機能を壊す生き物”ボウボウ”だ!!

吸い込むな。
吸い込むと感覚機能を失うぞ。」

”アイツラ”は残りの勢力を”騙し討ち”のような作戦で仕組んできた。

”GI”:「姑息なことをしおって」

”GI”は特別なアイテムを出した。
「そっちがその気ならこっちもコレだ!」

天狗団扇!
”GI”は団扇を出すと、それで大きく2、3度扇いだ。 
一気に砂嵐が退いて行く‥

今だ!
と、モーゼの海割りのように路が開け、”ゼファー隊”は一気に駆け上がる。

砂嵐の路を抜けた。

その先にステージが3つ見えた。
手前からA→B→Cと雛壇に
それぞれのステージに”アイツラ”が一体ずつが乗っかっている。まるでGAMEの世界だ。

誰が行く?
”GI”が向かった。が、それを引き留める”者”がいた。
「あなた様に先にいかれては困る。あなたは我ら”ゼファー隊”の最後の砦。少し様子を見ておいて下さい。」

普段あまり目立たないようにしている”ゼファー隊No.3 リョウが立つ。
細身の薄目。髪は長くストレート。
素早いよりは動きが華麗。それはまるで舞台で踊るダンサーの様だ。

Aステージ:”リョウ”が相手をするのはゴッツイコテコテのマジンガーZの様なロボキャラ。
”アイツラ”が自己紹介する。名前は”X(エックス)”だ。

二者がステージに立つ。
見合って間もなく、両者が飛び出した。

リョウはひとつ目の楔を”X”の肩に打ち込む。
”X”は身体が大きい割に動きが速い、
リョウを捕まえようと俊敏に動くが、リョウも負けじと交わす。
交わす度に、ハンマーで”X”の可動部に”楔”を打ち込む。
”リョウ”の得意技だ。”スキマる”

”X”は動きを止めた。”X”もただ動き回っていたわけじゃ無い。
動いたつもりで”囲った”
”X”は対象物を”フレーム”に入れ込む事ができる。
もはや”リョウ”は”フレーム”の中に縛られた。
物語の主人公”フレームの中の絵”のモデルになっていた。
”リョウ”は”フレーム内”のスペースでしか動けなくなった。

しかし”リョウ”は顔色ひとつ変えない。

”リョウ”が一声あげ、最後の楔を”X”の喉仏へ打った。

ガタガタと楔を打ったパーツ部から身体が崩れ落ちる。
頭、口、耳、鼻、腕、足、腰、様々なものが崩れ、パーツだけになってしまった。
それと同時に”X”の”囲い”も解けた。
”リョウ”は”フレーム内”から出て足元に転がった”X”のパーツのひとつひとつをハンマーで潰して歩いた。
”アイツラ”は放っておくと再生する者もある。

”X”の部品はゴツイ。
潰すのにも一苦労だ。時間がかかる。
案の定、転がったパーツ同士が再生しよう、身震いし、カタカタとひかれ合う。
コロコロと転がったパーツを楔を投げ撃ち、動きを止める。らちがあかない。

”リョウ”は”X”の前腕部の部品を拾い上げ、ステージ脇で見ていたミューマンに配線を繋げた。

「ズドドドド!!」

”X”の腕マシンガンを利用して”X”のパーツを全て打ち砕いた。

”リョウ”:「立派な武器だ。自画自賛せよ。」

”リョウ”は”X”の腕マシンガンを打ち鳴らしたあと”X”の腕を持ったまま、ウエスタン映画のように「フウッ」と煙を消すような仕草で目を細くし、後ろへ消えた。

==次はBステージ

またもや”ゼファー隊員”からの登場だ。

「”ゼファー隊員名簿No.4 名前は”ゴロ”じゃ。」

身体は小さいが、その分すばしっこい。よくいるタイプ。こう見えて格闘家。
両手に鋼鉄のまばらにリベットが付いているグローブをはめている。

Bステージの”アイツラ”はどうだ?

ん?気配は感じるが姿が見えない。

「カン!」鳴らないゴングが鳴った。
気配は向かってくる。
とりあえずゴロはそれを交わす。様子を見る。

また向かってきた。

ゴロ:「(実体を把握するまでは避けるしかない。さっきよりもギリギリで交わして気配をつかむぞ)」

気配は1段階スピードを増したようだった。ギアを一速足すように。

ゴロの”交わし”はすんでのとこで交わせたが、何か違和感を感じた。

ゴロ:「(これは‥¨アイツラ¨では、ない)」
と、きづいた。
しかし、どういうことだ?

考える間もなく、次の攻撃がくる。
同じく、すんでのところで交わす。それを繰り返す。

ゴロ「…これは…」
ゴロは次の一手をわざと攻撃を受けることにした。確かめたかった。¨何か¨を。

『きた!』

一か八かの策だった。
相手の攻撃がどんな破壊力を持っているのかもわからない。

そしてゴロの右手は吹き飛んだ。
そしてゴロは理解した。
『空術だ!』

右手の痛みよりもゴロの攻撃は速かった。
¨空術¨を読み取り既に本体へ向かって左こぶしを突き上げていた。

ゴロの左こぶしは本体の腹部へ深く突き刺さっていた。
「グブッ!」
頭上から落下した。
¨空術¨を操っていた本体が体内を循環するオイルを吐き出す。

本体はゴロの死角、頭上にいた。浮遊していた。

あやとり人形を操るように何もない空間に攻撃体を偽造し、ゴロにぶつけてきていた。視覚化しない攻撃体を。

ゴロ:「小狡いな。”空術”というのはそういう使い方をするもんじゃないぜ。よほど本体で戦うのに自信がないとみえる」

ゴロは服の布切れを破き、失った右手の傷をそれで覆い結えた。
軽傷ではない。

本体に素早く向かうゴロ。
そのゴロを捉えようとゴロの背後を”空術”の物体が追いかける。
「ザバッ!」
ゴロは攻撃をしようと見せかけ本体の隙を見てそれをやめた、フェイントだ。
本体を避ける。そこに”空術”の物体がそのまま鎌を下ろした。
本体は自分の”空術”で自分自身に攻撃してしまった。
オン•ゴール
操るコントローラーと本体は真っ二つに切れ再起不能だ。爆発音が辺りに響く。

ゴロは吹き飛んだ自分の”右手”を拾いあげ、その場を去った。

A,Bステージともにゼファー隊の勝利だ。

喜びもつかの間
隊長¨GI¨が「おかしい」と何かに気づく。

隊長:「このステージでの戦い。おかしいと思わないか?」
副隊長シン:「ええ。私もそう思ってました。なぜ”1対1”での戦いなのか…これはどう見ても時間稼ぎとしか言いようがない。」

隊長¨GI¨:「そうだ。¨アイツラ¨の数はまだ多い。戦いの終盤に向かうこのタイミングで、このバトルマッチはおかしい。しかし、なぜ時間を稼ぐ?゛アイツラ¨の作戦は?」

キックス②:「?。…艦は?」

副隊長シン:「…やばい。艦は今、留守番のグリーン、ただひとり!」

隊長゛GI゛:「”アイツラ”は作戦を変えたか!こちらが優勢と見て、きたない手段にでたな!」

キックス①:「ぼくら”ゼファー隊”が”アイツラ”の穴(ホール)を破壊するのが早いか?”アイツラ”がぼくらの”艦”を破壊し、このベリューにぼくらを閉じ込めるのが早いか?」

隊長”GI”:「いよいよ、”ここ”ベリューでの戦い”もクライマックスだな!
よし。作戦を立て直す。おそらくこのままいけばてっぺんの穴(ホール)は手薄。”アイツラ”は艦をつぶしにギャングを向かわせているはずだ。キックス兄弟よ。悪いが艦を救いに向かってくれないか?君たち兄弟はふたりで相当な数の”アイツラ”を倒せる。
うちらにはそれができない。最後の可能性を君たちにたくしたい。」

副隊長シン:「それでは、私たちゼファー隊は、このまま突き進むのですね?彼らを信じて。」

女海賊ウラ:「大丈夫なの?こいつら。信用できるの?艦は私たちゼファーの守り神よ。私たちで守るべきじゃない?」

隊長”GI”「わかってねーなぁ、ウラよ。はっきり言うぜ。今艦にもどっても、俺達には艦は救えねぇ。俺達には力不足、無理なんだよう。そして今救える可能性はただひとつ。彼らなんだよ!(怒)」

女海賊オモテ:「そんなぁ…」

隊長゛GI゛:「わかったならいくぞ!あのてっぺんだ!俺らは俺らの仕事をする!」

おお~!!(ゼファー隊が武器を天にかざす)

地鳴りがする叫びと同時にゼファー一団はてっぺんへ。
キックス兄弟は艦へ。
ひとつのうねりは上方と下方へとはじめてここで分かれた。

キックス兄弟が艦へ戻ると艦の姿が無い。

キックス兄弟は顔を見合わせた。
「艦は壊されるどころか乗っ取られた!」

おそらく巡回員グリーンは脅され、”グランドライン”へと誘導されているのだろう。
それにしても”アイツラ”は頭がまわる。悪どい方に。。
確かに艦を破壊して、ゼファー隊をリニューへ閉じ込める方法よりは、艦を乗っ取り”グランドライン”へ向かう方が、”アイツラ”はリニューから破壊されずに脱出でき、あわよくば”グランドライン”を乗っ取れるかも知れないのだ。

キックス兄弟は意を決した。
「追うぞ!!」

ミューマンとのフュージョンだ。
キックス①はミューマン”動”号機へ
キックス②はミューマン”知”号機へと、取り込まれた。
暗い深海へと飛び込んだ。

果たして艦船には追いつけるのか。

===次回へ続く。。


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