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鈴を持つ者たちの音色  第三十五話 ”鈴集め②”

GQ(自給)は固い大地を相変わらず掘り起こしていた。目標は”グランドライン”のあらゆる場所全部を掘り起こす事らしい。
お気に入りの鍬は段々と使いすぎて薄くなってきた。交換刃はまだある。先代の者もGQ(自給)がこんなにも在庫刃を使う事は全く想定していなかっただろう。在庫刃がなくなるか、先に”グランドライン”全体が全て耕されるか、どちらが先になるか楽しみだ。とGQ(自給)は言っている。

GQ(自給)が大地を耕してくれたおかげで、人工雨は側溝をつたり、溜め場に貯水しやすくなった。
大地は人の手で扱いやすくなり給水量を増した。
大地が給水した雨は、大地の固い地盤を時間をかけて透過し濾過され地下水へと溜まる。
地下水からは汲み上げるポンプを経由して各族者の持ち場へと放出された。

人工雨とは。
キックス兄弟が見つけた熱水洞の蒸気と熱水を集めた水だ。
キックス兄弟は”α”地帯巡回任務を得て熱水洞と冷庫洞を同時に見つけた。 
”グランドライン”本部はすぐにその資源を調査し、飲料水への開発へと展開した。
配管を通す時は”海モグラ”が地中。地上をGQ(自給)一家とBOO(武)が掘りものを指揮し担当した。
配管は各族者の持ち場へ経由させ、年中暖かくする効果を生み、冷庫洞付近へ通し温度を下げ天井から人工雨を降らせる仕組みにした。

”グランドライン”は大きさが限られた”城”の様な建物とも据えられる。
各族者には均等に生活スペースが与えられ住む場所は”砂壁の家”か”岩間の家”の二択で選べる。
この”均等”という基準が大事だ。
人には人よりも優りたい。有利に立ちたい。という”欲”がある。
ここ”グランドライン”は土地や食べ物、持ち物には必ず制限をかける。 
どんなに優秀な人材や家柄でも皆平等に扱う。
”差”は争いへと向かう”毒”であるから。
”グランドライン”には資源も水も何もかもが、数量管理されている。
1番怖いのが資源の枯渇なのだ。
”グランドライン”に住まわせてもらっている感覚が常に正確だ。
なので生活する民は”グランドライン”を”城”と呼ぶ者もいた。
”城”の腹の中に居て、餌が落ちてくるのを待つ胃酸の様な気分だ。

制限や平等が生活を維持し軌道に乗せた原動力となった。しかし、不満は絶えない。地上の生活を上回ることはないからだ。
GQ(自給)とBOO(武)は民が少しでも、民の気晴らしになればと考案した装置がある。
”虹”を”グランドライン”で実現させたのである。
”虹”は基本、光と水滴さえあればできる。
民が沢山通る中央道に”虹”が見える様に人工雨のノズルを数本設置し、光が対光点になる様な場所を選んだ。歩く民から見て対光点から上に42度の角度で設定する。

今では”グランドライン”内での観光スポットのひとつとなっている。
人工雨が降る時間になると人通りも多くなった。
そこを通る人は何個もの”虹”の輪を潜り抜けるのだ。素敵な場所になった。
GQ(自給)とBOO(武)はその中央道に名前をつけた。
”煌めき通り”と名付けた。

WO(女)は事情を説明してGQ(自給)を誘った。
GQ(自給)は家族と相談してくる。と言い、1時間後に、戻ってきてはすぐに「いいですよ。喜んでお願いします。」とふたつ返事で返してきた。

早々にGQ(自給)をゲット。

WO(女)は1時間待つ間、GQ(自給)が耕していた場所をじっくりと観察した。
均等でムラがない。常に一定。機械で耕したかの様だ。
何時から何時まで、この場所で耕していたのだろう。そして、いったいそれを何日間続けているのだろうか?

WO(女):「ねぇ。いつもこうやってひとりで耕しているの?」

GQ(自給):「はい。基本はひとりですが、最近は、私の後ろ姿を見て影響を受けた人たちがいまして、今じゃ20人くらいの団体が出来てます。おそらくそろそろ来る頃だと思いますが。私は朝起きたらすぐに耕しはじめるので、皆はまだ、そこまで体力が無いみたいです。」

WO(女):「一日中耕すの?」

GQ(自給):「そうです。今はそれが私の日課ですから。親は”土”の研究をしてますし、私が耕すしかないのです。それでもだいぶ進みました。今じゃどんどん人数も増えてますし。あぁっ。ほらほら来ました。」

ドカドカという足音と共に、20数人の老若男女が駆けつけた。
その中には何故か、BOO(武)の姿もあった。

BOO(武):「相変わらず早いねー。もうここまで来てたの?おそれいりますっ。」

GQ(自給):「あっそうそう。BOO(武)。こちらWO(女)さん。私たちを探しに来たって。」

BOO(武):「私たちを?なんで?」

WO(女):「まぁ。説明は後に。。BOO(武)さんも、よくこうやってGQ(自給)さんと一緒に大地を耕しにくるんですか?」

BOO(武):「そうだね。巡回任務も終わって何しようかな?と考えていたら、頭の中は”グランドライン”の事でいっぱいだった。どうしたらこの”グランドライン”をもっと住みよくできるかな?と考えたら、このカタチに行き着いたよ。筋肉と持久力のトレーニングになるしね。これもGQ(自給)の影響だよ。」

GQ(自給):「しばらくはふたりで大地を掘り起こしていたんです。そしたら、ひとり。またひとり。と影響者が増え、今じゃこの人数です。」

影響者:「GQ(自給)さん。はじめますよー。それじゃぁ身体が動く限り掘り続けていきますねー。みなさん。今日もここ”グランドライン”の為に身体を動かしていきましょうー。」

WO(女)は目の前のこの光景に感動した。
人数こそ少なけれどひとつの団体が今、地球の為、”グランドライン”の為に労力を惜しまず働きかけている。
人間本来のあるべき姿はこのような姿を言うべきだ。と改めて思った。

WO(女):「私も参加してよろしいですか?」

WO(女)は気づくと口走っていた。相当キツイとも知らず。
半日どころか、数時間でWO(女)は”大地を取り戻す会”から離脱した。
身体が悲鳴をあげた。”大地を取り戻す”というのはかなりの重荷である。一度には取り返せない。このような地道な一歩一歩の作業が大切なのだ。

掘り起こし作業の、合間にBOO(武)へも”天路の頂”の話をした。首にぶら下げている”鈴を持つ者”の話も。

ふたりの眼は美しい。
これから起きる出来事を前向きに期待し、想像しているのだろうか?
希望に満ちている。そして、
キラキラと清楚な光を反射する眼をしていた。まだ汚れや、世間の痛みを知らない眼だった。
こんな純粋無垢な、眼をしている若者を危険な目には合わせたく無い。
どんなことがあっても、私がふたりを守らねば。と。 改めて強い決意を胸に突き刺した。

残るは”海モグラ”だ。どうやって探そう?
WO(女)は”海モグラ”を最近どこかで見つけた?と聞いてみたが、この辺りじゃGQ(自給)とBOO(武)ぐらいしか、”海モグラ”の存在を知らない。聞こうにも”海モグラ”のことを公表するか、どうか、で迷った。
結局、”案ずるより産むが易し”だ。
”海モグラ”を想像し、”海モグラ”がいるであろう場所を目指し、”とぶ”ことにした。

WO(女)は水場を探した。
水場はないが、GQ(自給)の給水用の水筒を見つけた。

WO(女):「うん。あれぐらいならイケる。」

WO(女)はGQ(自給)とBOO(武)を連れて”海モグラ”のいる場所を目指してテレポートした。

ページを捲るように場面が変わる。
「ハッ」と気がついた時には3人は水の中にいた。息が苦しい。
目の前には軽快に泳ぐ”海モグラ”がいた。

WO(女):「(あちゃー。ふたり連れてテレポートできたのは良かったけど、行き先がどんな場所なのか、来てみなきゃわからないってのが難点だなぁ。まだ未熟な証拠だ。)」

WO(女):「(さすがに最初のテレポートでこんな場所だったら、あのふたりは流石に慌てふためいているだろうに‥)」

GQ(自給)とBOO(武)は予想に反して落ち着いていた。慌てるどころか、周りの状況を把握しようと思考を巡らせていた。さすがだ。

WO(女)も、とりあえず今いる場所がどういう所か予想した。”海”か?”湖”か?
水の中は明るい。
頭上から明かりが水の中まで差しこんでいる。
これは”海”ではない。
としたら”湖”だ。
そして”グランドライン”の中にある”湖”だとしたら今いる場所はあそこしかない。
”神龍の宮”の”湖”だ。
”海モグラ”はあの日ひとりここで取り残されて泳ぎを取得したのだろうか?
ずいぶん気持ちよく泳いでいるように見える。
それにしても湖にしては深い。
このまま水上したとしても湖面まで息は続くのだろうか。
そう思っていると、”海モグラ”の行く先へ水流の渦が巻いているのが見えた。

BOO(武):「(おい!このまま進んで大丈夫なのか!?渦に巻き込まれるぞ!」)」

GQ(自給):「そう言うが、どちらにしろ今いる場所は深すぎて、湖面までは息が続かない。”海モグラ”は何故か渦へ向かっている。”彼”はここ”グランドライン”の情報屋。地形には誰よりも詳しい。こりゃあ、彼に続くしか道はないっしょ。)」

WO(女)も同じだった。
以前と同じように、この”海モグラ”の道行く方向にはいつも安心感があった。
眠っていても知らずに目的地に着く寝台列車のようにそれはいつも正確で安心できる心地よさがある。
今は水の中にいて息が続く時間は短いけれど、”海モグラ”の悠々たる泳ぎを見ている限り、それは決定付ける信頼があった。

4人はそのまま水流の渦の中へ吸い込まれた。

真っ暗闇の中でスイッチを探してようやく明かりを付けるかのように眩しく光を受ける。
光に目が慣れるまで、目の前に何人かの残像が動くのを知った。

WO(女)か言う。まさか。

そこは”天路の頂”。そして大叔母の部屋の中だった。

WO(女):「これは?どうゆうことなの?私はテレポートしていない。なのにどうやって、皆んなをここへ連れて来れたの?」

大叔母:「それはね。こっちへおいで。見せてあげる。」

大叔母は屋敷裏手の庭へWO(女)を連れ出す。

裏手庭には畳10畳ぐらいの池があった。

大叔母:「この池と”神龍の宮”の湖は繋がっているの。”海モグラ”はそれを知っていた。」

WO(女):「そんな。”海モグラ”には先を読む力もあるの?彼は私たちが会いにいくと、その時には既にこの”神龍の宮”に向かっていた。まるで私たちが来るのも予想したようにね。”神龍の宮”へ続く水流の渦には息がやっとで間に合うぐらいの距離だったし。
いつも私たちの先をゆく。一体彼は何者なのよ。」

大叔母:「彼はここ”グランドライン”を知る者よ。それはもはや地形だけじゃないのかもしれないわね。」

WO(女):「テレポート無しでもここへ辿り着ける。何故それを先に教えてくれなかったの?」

大叔母:「それを教えると、テレポートを教える上でテレポートの大事さを身につける意義が無くなるからさ。あなた達には力をつけてほしい。
分かりやすく言うとテレポートはエレベーターで、”水越え”は階段。という所かな。」

WO(女):「そうだ。ジュン。テレポートのことなんだけど。テレポートする時に会いたい相手や行きたい場所をイメージするのはいいのだけど、実際”とぶ先”がどんな場所なのか、までは予想できないの?さっきテレポートしたら水の中だったからびっくりしたわ。」

大叔母:「それは、まだあなたが未熟だからよ。鍛錬すればちゃんと、これから向かう先の景色ぐらいイメージできるわよ。」

WO(女):「やっぱりそうだったんだ。」

大叔母:「水の力よ。”念”は水を通して通じ合える。そして私たちの体の中は大半が水よ。それを感じなさい。」

WO(女):「”水”とは計り知れない。未知なる物である。」








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