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サラリーマン川柳だけが川柳じゃない!川柳歴40年。本格的な川柳をご紹介します。
雨上がりひと風呂浴びたような山 茂俊
私が30年以上前に川柳句会で秀句に選ばれた句です。
川柳と言えばサラリーマン川柳のような、洒落を書くと思う方が多いですが、本来の川柳は俳句と並ぶ575の17音字で人間を詠む「人間諷詠」の短詩文学です。
本格的な川柳を知って欲しくて、川柳歴40年の私が、川柳の話を書いていきます。
もちろん本格川柳の名句や私の川柳も紹介していきます。
ご希望の方が居られれば、川柳の作り方の指導、川柳の添削もしていきたいと思います。
フォローしていただき、本当の川柳の世界を知り、本格川柳を作って頂きたいです。#川柳#575
川柳の約束事
脱ぎすててうちが一番良いという 岸本水府
番傘川柳本社の創始者、岸本水府の句です。こういう風に川柳は575で詠みますが、「脱ぎすてて うちが一番 良いという」というふうに、一時空けて書く人が多いですが、本来の川柳は一字空けません。
俳句では「~や」とか「~かな」という「切れ」を使いますが、川柳では使いません。
俳句の「季語」も川柳では使いません。もちろん言葉として使うのは自由です。
俳句は「破調」と言って、「字余り」「字足らず」を使いますが、川柳では「字余り」「字足らず」は使えません。575は最初から「上五(かみご)」「中七(なかしち)」「下五(しもご)」と言い、特に「中七」「下五」は必ず守るのが基本です。
「5音」「7音」に収まらない言葉やフレーズは、「上五」に持っていきます。「上五」は6音~7,8音と多少長くなっても許されますが、基本は「5音」を守るようにして下さい。
音数の数え方
太陽がバテなきゃ僕がギブアップ 茂俊
「あいうえお・・・」は1音
「ちゃ」「ちゅ」「ちょ」等の小文字は数えないので、これらも1音です。ただし、小文字の「っ」は1音に数えます。
長音「ー」も一音です。
例) では、ピッチャーは何音でしょう?
「ピ」「ッ」「チャ」「ー」で4音です。
さて、外来語を数える時は例外もあります。
例えば、関西では「タイガースファン」を「タイガースフアン」と言ったりします。
英語発音の「タイガースファン」は7音、
外来語発音の「タイガースフアン」は8音になります。
本来は7音の「タイガースファン」が正解ですが、8音の「タイガースフアン」もありになります。
このように適材適所で判断して下さい。
川柳の歴史
本降りになって出ていく雨やどり 古川柳(誹風柳多留初篇より)
「川柳」と言う名前はどこから来たと思いますか?
実は川柳の始祖「柄井川柳(からいせんりゅう)」からきた、人名なんです。
宝暦7年、1757年ごろ(江戸時代後期)に「川柳評万句合(せんりゅうひょうまんくあわせ)」という興業が起こりました。
俳諧連歌(はいかいれんが、575 77 575 77・・・と続く)の「発句(ほっく、連歌の1句目、後に俳句として独立)」を作る練習の為、「前句(まえく、77の14音字」に付ける「付句(つけく、575の17音字)」を応募する遊戯的な興業が流行りました。
例、 前句 「切りたくもあり切りたくもなし」というお題に
付句 「ぬすびとを捕へてみればわが子なり」と詠み
「ぬすびとを捕へてみればわが子なり 切りたくもあり切りたくもなし(山崎宗鑑)」と完成させる遊びです。
これが「前句付(まえくづけ)」といい、川柳の起こり。
「川柳評万句合(せんりゅうひょうまんくあわせ)」という興業の始まりです。
「川柳評万句合」の「点者(てんじゃ、今で言う選者)」の中で、 柄井川柳が人気を博し、「川柳」が選んだ句から、前句を省いても十分秀句として通る物を集め、印刷して出版したものが
「俳風柳多留(はいふうやなぎだる)」です。
初篇は明和2年(1765)に「呉陵軒可有(ごりょうけんあるべし、川柳の片腕と言われた人)」が版元「花屋久次郎(はなやきゅうじろう)」の後押しを受け刊行しました。
誹風柳多留は「川柳」時代の24篇までが有名で、全部で167篇出版されましたが、やがて「洒落」が主流を占めだし(今のサラリーマン川柳が流行るように・・)、「狂句(きょうく、シャレ・ダジャレの言葉遊び)」の暗黒時代に堕ちていきました。
やがて、明治30年代に入り、俳句の復興に尽力した「正岡子規」に触発された阪井久良伎(さかいくらき)、井上剣花坊(いのうえけんかぼう)により、川柳は復興していきます。
(番傘川柳本社編 「楽しい川柳」より
川柳の作り方
集まれに一番早く来たネズミ 茂俊
川柳を含めほとんどの創作は「発想」+「組立」です。
noteで発表されている川柳の多くは「発想」だけのように見受けます。
川柳が浮かんだら五七五にまとめただけでは良い川柳になりません。
「発想」したた川柳には「組立(推敲すいこう)」が必要です。
例えば家を建てる時、「ピンクの壁に白い屋根の2階建て」を建てるというのが「発想」とすれば、それを具体的に設計し建てるのが「組立」といえます。
「朝起きて顔を洗って歯を磨く」は五七五ですが、
これは「(私は)朝起きたら(まず)顔を洗って歯を磨きます」という文章を単に五七五にしただけで、短詩とはいえず川柳とは呼べません
添削するとすれば、何かキーになる言葉が必要です。
月曜はまだ寝ぼけてる顔洗う 茂俊
というふうに「月曜日」「寝ぼけ顔」といれれば月曜日のだるい感じがでて、共感を得やすいと思います。