新型コロナウイルスは怖いのか?怖くないのか?(その2)感染拡大はまだ続くのか?
新型コロナウイルスに対して恐怖心を抱いている人が想像以上に少ないことは感染が拡大している大きな要因の一つになっていることが予想されることは前回の記事でご紹介させていただきました。
このことは、新型コロナウイルス感染者に対する誹謗中傷が話題になったころから感染者数が若干減少する傾向が認められることからも予想されます。
しかし、新型コロナウイルスの感染が始まってからかなりの時間が経過し、気の緩みというわけではありませんが、自粛が緩和され「Go Toキャンペーン」などの経済対策が取られるようになってからマスクをせずに街中を歩いている人が目立つようになってきており、店の入り口に設置されている除菌剤の使用者が減っているという報告もあります。
感染者が増加するスピードは若干減っているようには見えるかもしれませんが、感染している人が街中を歩いている時点で同じ空間にいる人は感染する可能性があります。感染対策に対する手抜きは新たな感染を拡大する要因の一つになるということを忘れてはいけません。
さて、そのような背景の元、新型コロナウイルス感染症の症状が出ている人、あるいは、身近に感染していることが確認されている人がいるという濃密接触者は少なくとも外出するようなことは無いと思いますが、感染している自覚が無い潜伏期間にある無症状の感染者はマスクをつけずに外出することで新型コロナウイルスを巻き散らす可能性があるというわけです
新型コロナウイルス、さらには、ウイルスというのはどういう生き物?
新型コロナウイルスだけでなくウイルスという生き物を生物と扱うことについては専門家の間でも議論があるようです。
生物は細胞によって構成されおり、自己増殖能力やエネルギー変換能力を持ち、外界から隔離されているというように定義されていますが、増殖に必要な物質を造り出すのがDNAという設計図となる遺伝子とRNAという製造工場のような働きをする遺伝子です。
DNAという設計図を読み取り、RNAによって生合成に必要なたんぱく質である酵素を合成し、合成された酵素を用いて生命反応を行い増殖したりエネルギーを造り出したりします。
ウイルスと呼ばれる生き物は遺伝子とたんぱく質をエンベロープと呼ばれる膜状の構造物で包まれた構造をしており、自己増殖能力があるわけでは無く、宿主、新型コロナウイルスの場合は人の細胞に感染して人の細胞が持っている増殖能力やエネルギー変換能力を利用しなければ増殖することができません。
そういう意味ではウイルスは生命がある生き物とは考えられないという人もいるわけですが、生命の根源とも言える遺伝子を持っているという点を考慮して「非細胞性生物」あるいは「生物学的存在」と見られているようです。
ウイルスの内部には遺伝子と遺伝子を保護するように包んでいるタンパク質と結合しているヌクレオカプシドがウイルスの本体となり、それを包むエンベロープの表面には宿主を識別して細胞に感染する際に重要な働きをするスパイクたんぱくと呼べれる突起物が存在します。
スパイクたんぱくは寄生する細胞を見つける触覚のような働きをしているタンパク質であり、新型コロナウイルスでは人の細胞の表面に存在するアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体という部位を認識して人の細胞に結合して底を入り口として細胞内に侵入していきます。
ACE2受容体というのは気管支・肺を中心に心臓、腎臓、消化器など身体のいたるところの細胞で発言しており、口や鼻の細胞にも存在しているそうです。
細胞に侵入した新型コロナウイルスはエンベロープを破って自分の遺伝子を放出して人の細胞が持っている能力を利用して遺伝子を増幅させて、その遺伝子をエンベロープで包んで仲間を増やしていくというわけです。
新型コロナウイルスが増えるスピードは?
新型コロナウイルスが口や鼻に飛び込んでくると先ずは仲間を増やすために身近な細胞に感染する、すなわち、口や鼻の細胞に感染すると考えられます。
ウイルスには脳があるわけでは無いので、「どれにしようか?」と考えて寄生するわけでは無く身近に存在するACE2受容体を保持する細胞に寄生するというわけです。
そうなると、口や鼻の中でどれくらいのスピードで増えていくのかというのが気になるところです。
新型コロナウイルスが感染した細胞は6時間で新しい感染細胞を産み出すという研究結果がありましたが、この結果が正しければ、一つの新型コロナウイルスが口や鼻から侵入して近辺の細胞に感染すると1日で16個の感染細胞が生まれることになります。2日で256個、3日で4,096個、4日で6,536個、5日で1,048,576個という勢いで増えていくことになります。
毎年の脅威となっているインフルエンザウイルスでは1時間で16個の感染細胞が生まれてくるということですので、新型コロナウイルスが増える速度は決して速いというわけではなく、むしろ遅いくらいです。
インフルエンザの潜伏期間が1日から3日であるのに対して、新型コロナウイルスの潜伏期間は1日から12日と言われていますので、このことからも新型コロナウイルスが増えるスピードは遅いということが分かります。
潜伏期間の幅が大きいのは口や鼻に入ってくるウイルスの数には個人差があるからであり、大量に吸い込んだ人は短時間で症状が出てきますし、数個のウイルスしか吸いこんでいない人は症状を発症するのに十分な数に到達するのに時間がかかるということを意味しています。
ウイルスがどれくらいの数になれば肺に移動して症状が出るのかは分かりませんが、仮に、100万個になれば症状が出てくるとすれば、インフルエンザは1個でも体に入れば5時間程度で症状が出てくることになりますし、新型コロナウイルスでは5日もかかるということになります。
新型コロナウイルスは潜伏期間中はどこにいるのか?
ウイルスが「いつ頃肺に移動するのか?」というのも難しい問題ですが、新型コロナウイルスの場合には口や鼻に感染するのに適した細胞が存在するということであれば、先ずは口や鼻で仲間を増やしていくことになると思われます。仮に少量のウイルスが初期段階で肺に移動して肺の細胞に感染したとしても、それこそ免疫システムが働いて駆除されると推測されます。
言い換えるならば、新型コロナウイルスが口や鼻から入ってきても症状が発症していない、あるいは、肺炎の症状が軽く本人も気付かないような状態であれば、大半は口、あるいは、鼻の中にいるということになります。
咳やくしゃみ、あるいは、大声で叫んだからと言って鼻から飛沫が飛び出すことはなさそうですが、潜伏期間中といえども口からは大量のウイルスが唾液とともに飛び出しそうです。
濃厚接触者が感染している可能性が高いということですが、濃厚接触者の定義というのも新型コロナウイルス感染症が拡大してきた初期と現在では変わってきています。
当初、「新型コロナウイルス感染症が疑われる症状が現れてから隔離開始までの間」とされていたのが、「新型コロナウイルス感染症が疑われる症状が現れる2日前から隔離開始までの間」と変更されました。
これは、潜伏期間であっても感染が起こりうるということが判明したからであり、感染者が新型コロナ感染症に特徴的な症状が現れた日から最低でも2日前くらいからは高確率で感染するということを意味しています。
新型コロナウイルスは研究が急ピッチで進んでおり、ウイルスの新たな特徴が分かってきています。確実性の高い新しい情報が出るたびにルールも変わってくるというわけです。
ちなみに、2020年4月20日に公表された濃厚接触者の定義は以下の通りです。
言い換えるならば、新型コロナウイルスでは潜伏期間が非常に長い、あるいは、症状が有っても非常に軽いために、自分の口の中に大量の新型コロナウイルスを抱えていることに気付いていない人が意外と多いという点が感染拡大につながっているのではないかと考えられます。
まとめ
新型コロナウイルスでは口や鼻、特に口の中に感染可能なウイルスが存在していることが感染拡大の大きな要因の一つとなっており、一度にどれくらいの数の新型コロナウイルスが入ってきて感染するのかが潜伏期間に大きく影響すると思われます。
接触感染、すなわち、新型コロナウイルスが付着している場所に触れたことによって自ら口に運び込んでしまうケースでは初期の新型コロナウイルスの数は少ないと考えられますが、感染者の唾液の飛沫を吸い込んでしまった場合には初期のウイルスの数はかなり多くなり潜伏期間も短くなる、すなわち、主だった症状は無くても口の中にかなりの数のウイルスが存在することになり、感染が連鎖することに繋がりやすいと考えられます。
いずれにしても、感染拡大を抑えるためには
3密(密閉、密集、密接)を避けること
マスクによってウイルスの排出をできるだけ抑えること
手洗い・うがいを励行すること
などが大切になってきそうです。
特に、マスクの着用は新型コロナウイルスを吸い込むのを予防するための対策ではなく、感染者が別の人に感染を拡大するのを防ぐうえで重要な対策になってきます。