見出し画像

手取りは増やせるのか?

第50回衆議院議員選挙が終わり、新たな国政のカタチが見えてきました。
自民党と公明党の与党は改選前から議席数を73減らし、与党合わせて過半数の233議席に18届かない215議席。
一方で野党は立憲民主党が50議席増やし148議席を獲得するなど、勢力を伸ばした政党が多く、野党で235議席を獲得しました。
(無所属系が15議席)

野党の中でもキャスティングボードを握る存在として注目を集めているのが国民民主党です。
国民民主党は改選前の議席から4倍増の28議席を獲得。
玉木代表が訴える「手取りを増やす」という政策が若い世代に届いたのか、比例代表の出口調査を見ると、20代、30代ではどの政党よりも国民民主党の得票率が高いという結果でした。

一方で国民民主党の玉木代表によると、「私たちが欲しいのはポストではなく、選挙で約束した『手取りを増やす』経済政策の実現だ」と強調。自公政権で閣僚ポストを得て政策実現を図る手法をとらない考えを示した、とのことです。

このスタンスに与野党から、「部分連合」「政策連携」などラブコールを受けている国民民主党。

国民民主党の「手取りを増やす」という政策が実現可能なのか?検討してみたいと思います。


「103万円の壁」

そもそも国民民主党が訴える「手取りを増やす」政策ですが、そのキモとなるのが「103万円の壁」という問題。

給与収入が年間103万円の場合、基礎控除が48万円、給与所得控除55万円(最低額)となり、所得税はかかりません。(住民税は収入100万円を超過するとかかってきます)
例えば給与収入が年間113万円の方の場合、
113万-(基礎控除48万円+給与所得控除55万円)=10万円
となり、10万円に所得税がかかることとなります。

国民民主党の玉木代表によれば、103万円の壁で働き控えをする学生が多いらしく、人手不足の状況の中、年末を迎え、働き控えのアルバイトを雇えない雇用主からも悲鳴の声が聞こえているとのことでした。

国民民主党の政策では、この課税額の下限である「103万円」を基礎控除の引き上げなどにより「178万円」までに引き上げ、「手取りを増やす」ことを目指すようです。
-
財務省の試算によれば、実際に基礎控除を「75万円」引き上げた場合、
年収210万円の方には約9万円
年収2,300万円の方には約38万円
の減税効果がある一方で、この政策を実現するためには7.6兆円税収が減るとの予測もあり、「高額所得者優遇の制度だ」とか「7.6兆円も減収になった分の税収確保はどうするのか」といった批判も聞こえてきています。


「手取りを増やす」のは実現可能なのか?

そもそも「手取りを増やす」ために、これまでも政府では最低賃金を上げるなどの取り組みを行ってきました。
一方で、いくら給与が上がったとしても、その給与から所得税や社会保険料などが天引きされるため、実際の手取りは給与の7~8割程度と言われています。

国民民主党の政策は、天引きされる所得税を引き下げ、実際に生活費などで使用できるいわゆる「可処分所得」を上げる取り組みであり、学生アルバイトのみならず中堅サラリーマンなどにも効果がある評価できる政策だと思います。

また、私の周りでも、パートで働いている主婦の方の多くが、夫の扶養に入るために103万円の壁で働き控えをしており、基礎控除の引き上げは、そういう方々にとってもメリットがあると思います。

一方で、社会保険料については、パートの主婦の方の収入が130万円を超えると夫の扶養から外れるため、130万円の壁で働き控えをする方も増えてくると思います。


これから政策の実現のための駆け引きが繰り広げられると思いますが、「手取りを増やす」ためには、所得税のみならず社会保険料についても見直しをしていくべきと思います。

もちろん、財源論は出てくると思いますが、2023年度の国の税収は72兆761億円で、4年連続で過去最高を更新したこともあり、ある程度の税の還元は必要でしょう。

また、社会保障の担い手である働き盛り世代の社会保険料についても、負担減を図りながらどうやって社会保障制度を維持していくのか、大いに議論すべき論点だと思います。

ちなみに、今回国民民主党の政策を紹介しましたが、あくまでも「手取りを増やす」政策について紹介をしているのであって、国民民主党のすべての政策に賛同しているものではありません。
国民民主党が主張している安全保障の問題や原発の再稼働など、議論していかなければならない問題は多くあり、それは他の政党でも同様です。

いずれ、今回の衆議院議員選挙を契機に有権者の間でも繰り広げられている「政策についての議論」を、引き続き行っていくべきと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?