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地方の中心市街地における「空き家問題」のリアル

実体験としての「空き家問題」

ちょっと前の話になりますが、私の実家の持ち物であった築65年のアパートを解体しました。
木造の2階建ての建築物で、最盛期には店舗として貸していた店子も含めれば10以上の借主がいて、大いに賑わっていたのですが、老朽化が激しく空き家状態となり、倒壊の恐れもあったためやむを得ず解体することとしました。

びっくりしたのは、解体にかかる費用。
具体的な数字は言えませんが、実際に解体に掛かった金額は、数年前見積もりを取った時の50%増しくらい。
廃棄物の処置価格の高騰などから、処理費用はかなり上がってきているようです。
かつては土地や建物を持っていれば資産でありましたが、老朽化した空き家のような物件は、解体費を含んだ価値を見れば大きな「負債」となってします・・・今回の物件解体を通じてそんなことを実感しました。

花巻市の中心市街地には、今回解体した物件のような空き家がたくさんあります。
今回解体した物件の周辺には、活用していない空き家と、空き家解体後の空き地がところどころにある・・・数年前とは一変した中心市街地の風景となっています。


今回の記事は、自身が経験した空き家解体をきっかけとして、花巻市の中心市街地における「空き家問題」について、現状と今後の対策について考えてみたいと思います。

将来負担としての「空き家」

前回、一般質問で取り上げた「公共施設マネジメント計画」について記事を書きました。
記事では「将来の負担軽減のためにも公共施設の総量縮減をいかに進めるべきか」という視点から、花巻市の公共施設マネジメントについて考えてみました。

同じように「空き家」の増大も将来的に大きな負担となります。

例えば『空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「空家対策法」)』では、倒壊の危険があったり、衛生管理上著しく問題のある空き家を「特定空家等」と規定し、行政は「特定空家等」の所有者に対し、除却や倒壊防止、飛散防止などの措置の指導、勧告、命令を行うことができるとされています。
所有者がそれに従わない場合は行政による代執行が可能で、花巻市でも昨年度から中心市街地の「特定空家等」の除却(解体)の行政代執行(工事)が行われています。

今回行政代執行しているケースのみならず、倒壊の恐れのある物件は今後も増えると思われますし、今回の物件についてはわかりませんが「特定空家等」の解体に係る経費を所有者に請求したとしても、そもそも所有者に支払能力がない場合には、代執行した分の資金回収は不可能になります。

行政代執行にかかる資金回収不能のケースが増えていけば「空き家問題」が大きな負債となって将来の世代に重くのしかかってくることも否定できません。
そういう意味でも「空き家問題」については、行政のみならず議会も地域住民も今のうちから真剣に取り組んでいく必要があると思います。

花巻市における「空き家問題」

日本では高齢化と人口減少が進み、住む人が減少して空き家が増加しています。
総務省の調査によれば、全国の空き家数は約849万戸に達しており、全住宅数の約13.6%を占めているんだそうです。
この背景には、居住者の死亡や施設への入居による家屋の放置が大きく影響していますし、先に述べたように、空き家の管理や解体にかかる費用が高額で、所有者が負担できないということもその要因としてあると思います。

花巻市でも、高齢化と人口減少により空き家が増加しています。
令和5年3月時点で、市内には1,035件の空き家があり、平成29年度の965件から増加傾向にあります。

また、花巻市では地域住民の「空き家問題」への関心が低く、空き家の管理や活用が進んでいないと思われるところがあります。
空き家の管理はどうしても個人の責任とされるため、地域全体での取り組みが不足しています。これにより、空き家が放置され景観や安全性の問題が深刻化しています。

中心市街地の「空き家問題」対策

「空家対策法」では、市区町村が「空家等活用促進区域」の指定をすることができます。
「空家等活用促進区域」は、空き家の活用を図るエリアを定め、規制の合理化を図りながら空き家の用途変更や建て替え等の促進を図ることを目的としたものですが、花巻市が「空家等活用促進区域」の指定をしている地域はありません。

この問題は、市議会令和6年3月定例会で照井明子議員が一般質問で取り上げていますが、市では、これまでの建築確認申請の相談時においても、空き家の建て替えや用途変更に関する具体的な事例がほとんどないことから、「空家等活用促進区域」の指定について、性急に検討を進める必要性を感じていないようです。​

しかしながら、私は、地域の活性化と移住・定住を促進するためにも、地域再生拠点として中心市街地を「空家等活用促進区域」に指定することは必要だと思っています。
細かい制度の内容は省略しますが、「空家等活用促進区域」を指定することによって、地域再生法にもとづく地域再生拠点として空き家を移住者用交流施設として活用したり、観光施設として活用するなど、建築基準法上の用途の規制にとらわれない空き家の使い方ができるようになります。

このことによって、空き家のリノベーションがさらに進み、空き家を活用した新しいビジネスの展開が図られるなど中心市街地のエリアの価値が上がっていき、若者や子育て世代の移住が進んでいく・・・。
「空家等活用促進区域」は、空き家問題の解決だけでなく、地域全体の活力を引き出し、住みやすい環境を作り出す・・・花巻市の中心市街地を活性化を図るためにも「空家等活用促進区域」の指定は必要だと思います。

また、「空家対策法」では、空き家の適切管理や、空き家の活用管理における所有者と活用希望者のマッチングや等をスムーズに行うために、市区町村がNPO法人や社団法人等を「空家等管理活用支援法人」として指定することができると謳われています。

花巻市では、「空家等活用促進区域」を指定していないのと同様に「空家等管理活用支援法人」の指定もしていません。
「花巻市では既にいくつかの団体と協定を結んでおり、その団体との連携による空き家管理を行っている」というのがその理由ですが、連携先との具体的な空き家管理や空き家の活用の実態がよく見えてきません。

市町村のマンパワーの不足、市職員の負担軽減を図るためにも「空家等管理活用支援法人」の活用を図るべきだと思います。


「地域住民の話し合い」による「空き家問題」の解決

上記のほかにも、やらなければならない対策はいろいろあると思います。

特に「特定空家等」の未然の防止、すなわち特定空家化への予防策を講じることは必須だと思います。

先ほど述べた通り。花巻市では地域住民の空き家問題への関心が低い。
どうしても「空き家問題は行政がやること」という意識が強い傾向にあります。
行政のみならず、地域で空き家問題を真剣に考えていく・・・公共施設や地域公共交通でも取り上げましたが、そのためには「地域住民による話し合い」が何より大切です。

私もまだまだ勉強不足のところもありますが、自分が経験した地方の中心市街地における「空き家問題」のリアルな部分も併せながら、今後も「空き家問題」について取り組んでいきたいと思います。


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