「実力以外の何か」を引き寄せた「マネジメント」
北京冬季五輪の女子カーリング。
予選の最終戦、日本は首位スイスに4-8で敗れ5勝4敗となったが、同時刻に行われたスウェーデンVS韓国戦で韓国が敗れたため、ギリギリ4位で予選を通過し、準決勝に進むこととなった。
(twitter https://twitter.com/oricon/status/1494232914263158787より引用)
本当に薄氷の準決勝進出。
この日は、スキップ藤沢五月選手のショットが決まらず、第4エンド、第5エンドのラストショットがいずれもミスとなり、スイスにスチール(有利な後攻が先攻に得点されてしまうこと)を許してしまった。
第7エンドに2点返すものの、予選リーグトップを走るスイスが終盤底力を発揮し、結果4-8で敗れ、一旦は絶望にくれた。
しかし、その20分後、韓国がスウェーデンに敗れてしまうのだからわからない。
韓国が勝っていれば、当該チームの対戦成績で 3位カナダ 4位韓国 5位 英国 6位 日本となっていて、日本と英国は予選敗退していた。
(順位は正確ではないかもしれない)
なにはともあれ、準決勝進出。
前回の平昌冬季五輪も、今回と同じように1次リーグ最終戦でスイスに4―8で敗れた。しかし、4強入りで争っていた米国がスウェーデンに敗れたために、準決勝に駒を進めることができ、その結果銅メダルにつながった。
まさに「他力本願」。
しかし、このカーリングというスポーツは、他の競技と比較しても「実力以外の何か」が占める要素が大きく、こういうことはしばしば起きる。
アイス(氷)の状況、ストーン(石)の状態、自分が狙った場所に思い通りストーンをおけるとは限らない。数センチずれることによって、全く違う状況をつくりだす。
この「実力以外の何か」-それは「運」と呼んでもいいかもしれない-は、本当に気まぐれで、時に微笑みを時に涙をもたらす。
おそらく、今回参加した10か国(10チーム)が1か月後、同じように総当たりで予選を行ったら、結果は全く違うものになるだろう。もしかしたら今回最下位だったROC(ロシアオリンピック委員会)が、1位になっていたかもしれない。
それくらい実力が伯仲していた10チームだった。
もしも、ロコ・ソラーレが「実力以外の何か」を引き寄せるものがあったとしたら、それは彼女たちのマネジメントだろう。
彼女たちは、たとえ誰かのチャレンジがミスにつながったとしても、そのミスをほかの3人がカバーし、次のショットに引きずることのないよう切り替えることができる。
どの戦術をとるのか迷うような難しい局面になっても、皆で相談し短時間で決断する。その決断に対して皆が責任を負う。それが失敗に終わったとしても、誰も不満な態度を見せることはないし、その結果を受け止め次につなげる。
そして彼女たちは、感情を表に出し、仲間に対してポジティブな声掛けを行い、よく笑う。そして、よく泣く。
厳しい戦いにおいても、そのマネジメントができるのが、ロコ・ソラーレの強さでもある。
これは簡単にできることではない。
ビジネスシーンを思い出してほしい。
数多のチームプロジェクトが、ロコ・ソラーレと真逆のマネジメントをしている。
これはあくまでもフィクションで一般例だが、「セーフティー」で「他責」なメンバーによるプロジェクトはこういう結末をたどることがよくある。
ロコ・ソラーレが今回スイスに負けた試合でも、
「あれだけミスをしたら負けるのは当然」
とか
「大事なゲームは一つのミスでも致命傷になる」
などの意見が、ヤフコメやSNSでも飛び交っていた。
おそらく、セーフティーで他責性の者は、こういう発想でチャンスを失うのだろう。
そして一度のミスを引きずり、切り替えがうまくいかないだろう。
ロコ・ソラーレは、カーリングを通じて、いかに「ポジィティブ」で「チャレンジするスピリット」が大事か、教えてくれる。
それは、僕らに一番欠けているものなのかもしれない。
さあ、今日から準決勝。
彼女たちがメダルの可能性をつないだ・・・ことを喜ぶよりも、まだあと2試合、ロコ・ソラーレが見られる期待の方が大きい。
スポーツは、ただ単純に勝敗を競うものではなく、勝敗を含めたエンターテインメントだとしたら、ロコ・ソラーレはたとえ連敗して4位に終わろうとも、その姿はメダルを超えた価値基準を示してくれるだろう。
(もちろん2連勝してほしいが)
彼女たちはもうすでに、勝者たるに値する。
笑顔も、涙も、信頼も、勇気も。
そこには、「実力以上の何か」を引き寄せる力がある。
がんばれ、ロコ・ソラーレ。