長電話したい夜は、
10代の頃、
私たちはよく長電話していた。
深夜や早朝に、
無意味なメールのやり取りをし、
それでも物足りなくて、
とりとめもないことを電話で話して、
その話の続きは、
ルーズリーフに書いてこっそり授業中に回した。
そして、
手紙の返事も兼ねてまたメールして、
電話して、
手紙書いて、、、
いつまでもそんなループの中にいるような気がしていた。
ところが、
そのループは、
案外あっさりとぷっつりと切れてしまっていて、
切れたことにも気づかなかった。
それでも、
真夜中の長電話の習慣は、
なくならなくて、
失恋をした時、
恋をした時、
恋を諦めようとした時、
いつだって、
真夜中に長電話をしたものだった。
女友達と、
とりとめもなく恋バナをするのが、
楽しかった。
辛い時も、
切ない時も、
友達と電話で話すのは、
楽しかった。
今、もうすぐ30歳になる私は、
長電話できる相手がいない。
結婚した友達、同棲中の友達、
そういう子達には遠慮してしまう。
互いにスケジュールを合わせてやっと会えた時には、
もう話すことがたくさんで、
あれ、この話したっけ?
あの話の続きどうなったの?
なんて、
要点だけ掻い摘んで話してたつもりが、
あっという間に帰りの時間になってしまう。
どうでもいいことをあてなくだらだら話すのはなんとなく憚られる。
そして何より、
みんなとにかく眠りたい、
一刻も早く寝たい。
働き盛りの女性にとって、
これは結構重要なことで、
できれば、
電話でなんか夜更かししたくない、
って言うのも事実だ。
私自身だってそうだ。
明日のこと、
たまった仕事、
将来の不安、
考え出したらキリがないんだから、
とっとと寝てしまうべきなのだ。
それでも、
あのとりとめもない、
何の答えもない長電話をしたくなるのは何故だろう。
しかも、真夜中限定で。
子供っぽい恋愛がしたい。
惚れた腫れたに一喜一憂。
手をつなぐ以前に、
ふと触れた瞬間にトキメキたい。
ああ、真夜中の電話への気持ちは、
結局そんな気持ちと一緒のような気がする。
今、私がしているのは、
本当に恋愛なのか、
自信がない。
私は、これから先、
純粋に人を好きになれる自信がない。
そのままの自分でいられる恋愛ができるのか、
まったく自信がない。
全部くだらなくて、けど、深刻なこと。
誰かに、
嘘でいいから大丈夫よ、と言われたい。
占いとかじゃなくて、
カウンセリングとかそういうんでもなくて、
もっと気軽に、
「へぇ、まっ、
そのうちいい人と出会えんじゃない?(笑)」
って
その程度でいいのだ。
その程度がいいのだ。
真夜中の電話は女友達に限る。
くだらない事を笑って、
脈絡のない会話と溜め込んだ愚痴も、
全部許容してくれる女友達は、心地よい。
けれども、結局、
私は、都合のよい男の人に電話して、
曖昧な頷きに妥協する。
そして、私は、めんどくさい女になるのだ。
気づけば、
私は、
真夜中に電話口にポツリと落とすべき言葉を失ってきたのだなあ。
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