【女神と共に生きようぞ】
今日は16年前に逝った君の誕生日だ。
日本に暗黒の時代をもたらした「2・26事件」と同じ日生まれとは、なんと忌まわしい運命なんだろうとか。
「芸術は爆発だ!」の岡本太郎センセイと同じ誕生日なんて、大いに笑える人生じゃないかとか。
いつもからかいのネタにしてはいたものの、春を控えながらもまだまだ峻烈な寒さの残るこの日が僕はとても好きだった。
それは旧弊な価値観や世間の目などと闘いながら、自分の目指す道をひたすら突き進む君のひたむきな姿に通じるものがあったように思う。
*
ある日、間近に迫る死を受容したのか。
君は静かな調子で「忘れられるのが怖い」と言った。
「忘れたりするもんか!」
反射的にそう答えた僕は、16年経ったいま、ひどいことに時々君のことを忘れてしまう。
むろん、命日のことは決して忘れはしないけれど、あの日のことは今でも思い出すのが辛い。
*
だから、これからは、楽しい思い出が一杯詰まった君の誕生日のことを、いつも思い出そうと思う。
そうして、いま一番自由を感じるバイクツーリングに出かける時も、恐がりだった君を無理矢理胸に抱いて、君が大好きだった山や川や花を眺めながら、のんびり走ることに決めたんだ。
嫌とは言わせない。
だって、僕にとっての君は、永遠の女神なんだからね。
※掲載した絵はチェンマイでサバイバル・ライフを始めた1年前に、タイ人相棒のウイワットが描いてくれた。
(2020年2月26日記)
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