小楊の娘たち

【学校に行けない中国の子供たち】

洛陽でも続く“閉じこもり”

 彼女が18歳の時に知りあって以来、娘同然の付き合いをしてきた小楊(シャオヤン)は、昨年刊行した小説『狂龍(クワンロン)』(Kindle版)の重要な登場人物だ。

 今は二人の娘(写真)の母親となって、生まれ故郷の河南省洛陽で暮らしている。

 河南省といえば、新コロナウイルス発生源都市・武漢のある湖北省と北側で接している。

 そこで暮らす人々にとっては、天を仰いで胸を叩きたいほどの恐怖の位置関係であろう。

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 昨夜届いたメールによれば、相変わらず家から出ることができないそうだ。小学生の長女も学校に行けず、ネットで勉強しているのだという。

 若い頃の小楊の面影を映すその愛らしい横顔は、やはり寂しげだ。

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 知り合った時の小楊の視力は、2.0だった。

 しかし、彼女はホテルのビジネスセンターで働きながら自力で大学に入り、コンピュータ・ネットワークを学んだ。

 大学を出るとネットビジネス関係の仕事に就き、結婚後もネット販売などを手がけてきたのだが、おそらく出産の影響もあるのだろうか。

 最近は視力の減退が激しく、パソコンやスマホを扱うのも辛くなってきたという。

 いつ終息するやも知れぬ新型肺炎もむろん怖いが、彼女の今の一番の心配ごとは、幼くして毎日長時間にわたってパソコンに向かわざるを得ない長女の視力である。

「あの少女だった君も、立派な母親になったもんだ」

 そう呟きながら、家に閉じ込められた一家と人々の切なさを想うと、どうにも堪らなくなるのである。

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クンター吉田@チェンマイ在住物書き
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