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【アルコール販売禁止を巡るドタバタ劇の真相】


 
<タイのプラユット首相は5月1日付官報を通じて、非常事態宣言下における規制緩和の対象を発表。5月3日から食堂やコンビニアなどでのアルコール飲料販売も許可されることになった。ただし、店内での飲酒は認められない>

 明け方にこの報道に接して、思わずのけ反った。

 すでに発表されている1ヶ月延長措置から、わずか1日でのどんでん返しである。

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 ドタバタ劇の始まりは、 「新コロナ感染症状況管理センター」が酒類販売全面禁止令の延長に備えて「5月1〜2日の2日間を買い溜めのための猶予期間に当てたらどうか」という提言をしたことにある。

 これがたちまち、「すわ、買い溜めに備えよ!」という先走り報道や憶測、根拠のないデマになって広まり、タイ人ばかりか多くの日本人までが踊らされる羽目になった。

 これに冷水をぶっかけたのが、4月30日の内務省のチャチャイ事務次官による「猶予期間なしで1ヶ月延長」という発表である。

 最初にこのニュースを知らせてくれた友人に対し、私はすぐさま「閣議決定か、県知事決断か?」という質問を返した。

 これまでの一連の流れを考えると、「内務省事務次官発表」という形式がどうにも唐突かつ奇妙に思えたからである。

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 その違和感を裏付けるように、翌1日にはソムサック国家安全保障評議会事務局長というご仁が、「酒を提供しないことなどを条件に3日から飲食店店舗での飲食を認めるが酒の持ち帰りは禁止していない」と発言した。

「ん、何じゃこりゃ?」

 と思いつつ、3日から始まるだろう「段階的営業活動規制緩和」を見越してチェンマイ市街各地を取材して回ったあとの本日深夜から明け方にかけて目にしたのが、冒頭に書いたプラユット首相による「酒類販売禁止令解除」の報道である。

 いやはや、こうなると絶句したあとに笑ってしまうしかない。

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 ま、今日午後あたりには「新型コロナ感染症状況管理センター」が結論を正式発表するということだが、そのトップはプラユット首相であるらしい。

 ということは、おそらく解禁という方向になるのだろうが、定められた手順としては「政府方針と同等、またはより厳しい措置を取る権限を有する」各県知事による最終判断ということになる。

 ここで重要なのは「酒が買えるか、買えないか」という目先の事態に右往左往するのではなく、なぜこうした不可解なドタバタ劇が起きたのかを冷静に分析把握することだろう。

 むろん、業界からの強い圧力もあったろうし、飲ん兵衛たちの不満爆発に対する懸念もあったろう。

 だが、一枚岩であるべきはずの「強い政権」に大きなぶれが生じた事実に、我々はもっと注意を払ってもいいのではないだろうか。

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 さて、きな臭い世俗の話題はこれくらいにして、閑寂なワット・ウモーンの世界に目を転じよう。

 10数年前、ここは「静かな寺の代名詞」だった。

 コロナ禍で、少人数による参拝やタンブン(喜捨)のみを受け入れている林の中の境内には、いま再び足下から涌き上がるような底深い静けさが満ちている。

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 タイ人と同様の怖がりである私は、さすがに密閉感のある「ウモン(トンネル)寺院」内には入る気がしなかったけれど、境内でのんびりと過ごす僧侶や喜捨を受ける少年僧たちの姿を眺めるだけでも、心が静まってくる。

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 最初に書いたどこぞの騒ぎが、まるで別世界の珍事のように思えてくるのである。

 アニメを通じて、タイでもすっかり有名人になったあの一休さんが、こう喝破しておりますなあ。

「慌てない、あわてない」


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クンター吉田@チェンマイ在住物書き
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